弁護士が集まると「営業」についてよく話題になる。
潜在的依頼者から「こういうのできますか?」と聞かれれば「はい。経験あります。」ということに加えて「ちなみに〇〇もできます。」と付け足したくなるし,何かの縁で知り合った後にはメールで「お仕事でご縁があれば」というような言葉を添えたくなる。何かで取材を受けたり原稿を書いたりするとSNSで拡散したくなる。
ときどき,弁護士のこうした態度は「がっついてる」という指摘を受けることがある。しかし,書いている側はなるべくそういう意図を表に出さないように出さないように意識していることが多いように思われる。書く側の意図と,受け取る側の印象は随分違うものだ。
スタートアップ界隈の人たちとは大きく違う。「今月,導入者数〇社突破しました!」「新しい機能をローンチしました!」と,堂々とSNSでアピールする。それに対して「がっついてる」という評価はなく,仮にそういわれたとしても「で?」で終わる。
スタートアップは,社長本人を売り込んでいるわけではなく,あくまでプロダクト,サービスを売り込んでいるから,ガンガンアピールできる。リーガルテックの事業サイドに移った弁護士たちは,水を得た魚のように,気持ちよくアピールしている。これに対し,弁護士は,結局自分を売り込むことになるので,奥ゆかしくならざるを得ない。この点,欧米の弁護士のほうが気持ちよくアピールする。
「がっついている」という評価をしているのは,クライアント層というよりはむしろ同業者だったりもする。結局,周りで牽制し合っているだけのようにも思える。そういうつまらない牽制はやめて,我々も「自分すごい!」とアピールし合ってもいいのではないかとも思う。とはいえ,自分にはできないけれども。