Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

顧問契約によって提供されるもの

だいたいどの弁護士も企業の顧問契約が欲しいもの。


弁護士にとっては安定的な収入源になるから,弁護士側のメリットは明らか。では,依頼者側のメリットは何か。これは簡単に説明しにくい。いくつかの事務所では「顧問契約を締結することのメリット」をウェブサイトなどで説明しようと試みている。


顧問契約は,だいたい月額一定の報酬を支払うことによって,何らかの法律事務が提供されるのだが,訴訟代理を含めてあらゆる法律事務がそこに含まれる訳ではない。何がどこまで含まれるのかというのは,法律事務所によって異なる。だから,依頼者側もその点,よく注意する必要がある。


割と多いパターンとして,一定時間内の法律事務をパッケージ化して,その時間内であれば超過料金を請求しないが,それを超えると超過分を請求する,というパターンがある。


具体的には,例えば1時間当たり25,000円のタイムチャージを請求する弁護士がいたとして,月額10万円の顧問料の場合,4時間までの法律事務であれば追加請求は行わず,それを超えた場合に超過分を清算することになる。ただ,この例だと,ある月に2時間しか作業が発生しなくても依頼者は10万円を支払わなくてはならないので,依頼者のメリットないじゃん,ということになってしまう。そこで,依頼者側のメリットを出す方法として,

  • 月額10万円の顧問料で,12.5万円までは追加請求しない(つまり,上記の例では,4時間を超える作業が発生した場合,2.5万円依頼者が得をする)という方法
  • 上記の他,通常のスポット依頼ではタイムチャージ30,000円のところ,顧問企業の作業の場合には25,000円とする,というように,単価で調整する方法
  • 簡単な電話,メールレベルの相談については,時間をカウントせず,無料にする方法


などをきいたことがある(もちろん,この組み合わせもあり)。


ただ,「4時間までの法律事務」だったら何でもそこに含まれるかというと,弁護士・事務所によって異なる。訴訟の代理は別になっていることが多い。ある事務所では,「顧問契約に含まれないもの」として,「議事録,規約,契約書,意見書の作成」と書いてあったが,逆に,これが定額の顧問料の枠に含まれないとしたら,他にいったい何をしてくれるの?という気がしないでもない。


この例を純粋に貫くと,ある月に契約書の作成しか依頼しなかったとすると,顧問料+契約書作成費用をまるまる支払うことになってしまう。おそらく,現実にはそういう場合,ディスカウントしたりするのだろうけれど。


上記のような時間ベースの精算方式をとらず,紛争解決などの一定の場合を除いて原則として何でも対応する,というケースもある。この場合,山のように相談・依頼が来ると弁護士側も困ってしまうので,それほど頻繁に依頼が来ない中小企業に限られるだろう。


その他にも弁護士側は,いろんなメリットをアピールしている。その例としては・・


「急な依頼にも,他の依頼者より優先して対応します」などとするケース。あくまで相対的なものであり,顧問企業複数から急な依頼があった場合には,どうするの?という気もする。


「会社案内,ウェブサイト等に法律顧問として当事務所の名前を記載することができます」とするケース。確かに,一度,スポットで相談に来ただけの依頼者のウェブサイトにうちの事務所が法律顧問として書かれていて困った,という話を聞いたことがあるが,よほどのネームバリューがあるところでなければ,これはメリットになり得ない。


「電話・メール相談が可能」とするケース。確かに,まったく知らない企業から,電話やメールのみで法律相談を受けるのは危険であるから,顧問企業に限定する,という話も理解できる。電話やメールで簡単な相談ができるというのは依頼者にとって便利。ただ,顧問契約を締結しない相手であっても,素性が分かっている相手であれば,電話,メールの対応もできなくはないのだが・・


その他にも,ちょっと調べてみると,

  • 「紛争時の着手金・報酬を割引する」というケース
  • 「役員・従業員のトラブルに対応することによって福利厚生になる」というケース
  • 「困ったときに弁護士を探さなくてもいい」・・


いろいろあるようだ。