もう今さら紹介するまでもない、松尾剛行先生による新作。『ChatGPTと法律実務』
本書のポイントは、表題が「ChatGPTの」ではなく「ChatGPTと」となっているところで、新種のサービスが出てきた際における法律問題を解説する書にとどまらないところである。
もちろん、第3章ではChatGPTに絡む法律問題を、個人情報保護法、著作権法等の法分野ごとに厚く解説されており、それはそれで当面の実務において頼りになることは間違いないが、その魅力は本書の一部に過ぎない。
リーガルテック、特にLLMを活用したChatGPTの広がりとともに、この種のサービスが法律実務にどのような影響を与えるのか、われわれ弁護士を含む法律関係者はどのように向き合っていくかということを考えるきっかけを与えてくれる。このあたりは、後半の目次を見るだけでもわかっていただけるのではないかと思う。
第7章 ChatGPT時代に「生き残る」弁護士・法務担当者とは
第8章 ChatGPT時代の「価値ある」弁護士・法務担当者にむけて
第9章 2040年の弁護士業務
第10章 2040年の企業法務
私も、ChatGPTを触ってみたときに、漠然と「あー、これは間違いなく来るな」と感じた。これまでも、私が社会に出る前から、文書が手書きからワープロ、PCへ、コミュニケーションは電話/FAX/対面会議からメール/チャット/ウェブ会議へと広がってきて、もはやこれを使わない選択肢はなくなった。ChatGPTなどの言語生成AIもそのような位置づけになっていくだろうなと。
ではいつ始めるべきか、どこにどう使ったらよいか、手遅れにならないためにはどうしたらよいか、という悩みについて、本書は、正解がない中にも手掛かりを与えてくれる。また、プロ意識が高い筆者の考え方が随所に感じられ、プロフェッショナルの姿勢としても学ぶところが多い。