Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

二枚金のオジサン

久しぶりに将棋の話題。5年くらい前の話。


長男が1年生から2年生の頃はよく将棋連盟の道場に通っていた。ちょうど初段になったころ,長男とよく対局しているオジサンがいた。


いかにも将棋道場にいそうな雰囲気で感じで,歯が抜けていたりして,おじいさんに見えるが,おそらく実年齢は見た目ほどではないだろう。愛想がよくて,よく長男に話しかけていた。


あるとき,長男を道場に迎えに行ったら,かなり長時間いたはずなのに手合いカードの対局数が少ない。疑問に思って聞いたら,例のオジサンが「ぼうや,もう1局」といって離してくれず,10局くらい連続して指していたそうだ。


私もそのオジサンと長男が対局しているときの様子を少し覚えている。いつも玉の囲いは二枚金。二枚金(金無双ともいう)は,相振り飛車のときに使われる囲いのはずだけれど,長男が振り飛車にしても,居飛車にしても,いつも二枚金だった。


その日は,どこかでケガをしたのか,額から血を流しながら指していた。それが気になってしかたない。ダブダブのコートを着ているので,指すたびに袖で自陣の香車,桂馬,玉を引っかけてしまい,ザザーッと盤の中央にずれてしまう。でも,そのオジサンは気付かないので,長男がずれた駒をササッと元の位置に直していた。「ん?ずれちゃったか?」と言いながらも,次に自分が指すときにはまた引っかけて,また長男が戻していた。そんな状態だから,そのオジサンが勝つことはなかった。


たまにプロの将棋で二枚金を見るとそのオジサンを思い出す。今も連盟の道場で指しているだろうか。