NBLの論考の紹介。
3Dプリンタができて,模倣品,偽造品が容易に製造されるようになったとしても,知財法的には特に新しい論点はないのでは?という疑問について,冒頭から「結論からいえばその考えは誤っている。」と述べて,個別の論点について問題提起をしている。
3Dデータが有体物類似の金型的性質を有するとし,デジタルデータゆえに拡散が容易であるという本質的特性を挙げたうえで,対象物が意匠権,著作権,商標権(立体商標)で保護されている場合,不競法保護対象の商品形態と同一形状となっている場合,特許・実用新案との関係について説明している。
大ざっぱに紹介すると(これだけ端折ると真新しくないかもしれないが,詳細は原文でご確認いただきたい),
意匠権がある場合には,3Dデータ作成行為は,実施とは言えないものの,間接侵害になるケースもあり,データの譲渡も同様。
著作権がある場合には,3Dデータの作成行為は,複製または翻案と評価でき,データの流通は公衆送信権,譲渡権侵害を構成し,譲受者も私的使用目的でなければ複製権侵害となる。
商標権(立体商標)がある場合には,3Dデータの作成行為は,37条8号の間接侵害を構成し得るもので,データの流通についても37条6号,8号の間接侵害が成立し得る。
不競法で保護される商品形態と同一形態の場合,3Dデータの作成行為は,2条1項1号との関係で不正競争とは評価できないものの,その危険があるとして差止めの可能性,3号との関係で3Dデータも「商品」に含まれると解した上で不正競争行為とは評価できないものの,同様に差止の可能性を指摘している。
特許との関係では,特許製品に不可欠な部品の3Dデータを作成する行為は,101条の「物」に3Dデータも含まれるとして,間接侵害を構成し得るとし,譲渡についても同様だとしている。