Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

BLJ 2011年12月号(システム開発契約特集等)

Business Law Journalの最新号の特集は「システム開発契約 成功と失敗の分かれ目」。


執筆陣は,松島淳也,北岡弘章,平野高志,上山浩の弁護士。IT,ことにシステム開発関連法務においては,もっとも有力・有名どころが揃ったという印象。


普段からシステム開発契約・紛争を取り扱っている者からすると,ベーシックな内容が中心だが,コンパクトにまとまっており,ひととおり確認するには適している。ただ,上山先生のOSSオープンソースソフトウェア)に関する記事については,やや専門的ではあるが,今後ますます増えていくOSSの利用に当たって留意点が多い。


興味深かったのは,弁護士陣による執筆のほか,ベンダ,ユーザからのアドバイス,コメント。特にベンダからのコメントは匿名であることもあり,「ベンダ必罰主義がトラブルの種になる」「免責条項,責任限定条項に例外を設けてくるような主張は『過保護』だ」という主張など,本音が見られる。


また,この特集の枠外だが,「ソフトウェア保守サービスにおける独禁法上の優越的地位の濫用と知的財産権との関係」(高田寛氏)も興味深い論考。ベンダによる一方的なパッケージソフト保守料の値上げや,保守の打ち切りが,優越的地位の濫用(独禁法19条,2条9項5号)にあたるか,さらには,ベンダの行為は同法21条(知財権の行使との調整規定)により,正当化されるのかという問題提起がなされている。


確かに,従来型のソフトウェア販売ではなくクラウド型になれば,より一層,ユーザはベンダの条件に対して拘束されるようになるため,この問題が顕在化しやすいといえるが,本論考ではまだ問題提起にとどまり,公取委の知的財産の利用に関する独禁法ガイドラインではまだ十分に対応されているといえない,と述べるにとどまる。


ps
付録で,LAWYERS GUIDE 2012として,立派な法律事務所の弁護士紹介ブックレットがついていたが,さっさと捨ててしまった。