Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

2016年に紹介した裁判例

別館のIT・システム判例メモ(http://d.hatena.ne.jp/redips+law/)は,始めてから丸7年が経過した。掲載判例は220ほどになる。この1年は23個しか紹介できなかった。それを判決年月日順に並べてみると。。。


■東京地判平28.4.28
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160725/1469373646
今年出された大規模システム開発訴訟判決の一つ。ERPパッケージ導入が頓挫したのは,ユーザ側に問題があったとしつつも,ベンダがユーザを適切にリードする(付随)義務を怠ったとして,ユーザの請求の3割を認めた事例。


■東京地判平28.4.1
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20161207/1481118619
弁護士が開発を委託した集団訴訟管理システムの完成が争点となった事例。ユーザが不具合であるとする個所について,当業者にとっては自明であっても,そうでないベンダにとって必要だといえないなどとして,仕様書に記載されていない機能が実装されていなくても完成は否定できないとした。


旭川地判平28.3.29
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20161103/1478099168
今年出された大規模システム開発訴訟判決の一つ。医療法人のシステム開発が頓挫した事例において,仕様凍結の合意後も仕様のやり取りが続いていたことについて,ユーザ側の責任を一定程度認めつつも,ベンダの過失割合を8割とした。


知財高判平28.3.23 
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160405/1459783159
変数やテキストデータが格納されたファイルについてプログラムの著作物としての創作性を否定し,かつ,当該ファイルは項目が指定されているのみで情報それ自体が格納されていないからデータベースの著作物としても観念できないとした事例。


■東京地判平28.2.26 
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20161215/1481810226
医療機器に存在した不具合について,売主はどこまで対応すればよいかが争われた事例。請負契約の目的物たるソフトウェアの不具合の場合,不具合の指摘を受けた後,遅滞なく補修するか,代替措置を講じたときは瑕疵には当たらないとされているが,それと考え方が近い。


知財高判平28.1.19 
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160205/1454599999
旅行業者用システムに含まれるリレーショナルデータベースについて,体系的構成に創作性が認められるとし,著作権侵害を認めた事例。


■大阪地判平27.9.24 
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160403/1459668563
観光案内用のピクトグラムの著作物性,ライセンス契約の終了後の撤去・抹消義務等の存否について争われた事例。


■大阪地判平27.8.20 
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160629/1467191270
合意がない限り更新されるというサポート契約の自動更新条項の解釈について,やむを得ない事由があれば合意がなくとも更新拒絶ができると判断された事例。


■東京地変平27.8.17 
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160503/1462280857
利用規約の定める禁止事項に該当するとしてアカウントを停止されたユーザが,処分の有効性,規約変更の有効性を争った事例(本人訴訟)。


■東京地判平27.8.5
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160525/1464186337
ビットコインは所有権の客体にならないとして,破産法62条に基づく取戻し権の行使を認めなかった事例。


■東京地判平27.6.25
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160217/1455635342
請負契約という表題になっていた契約について,その実質は,いわゆるSES契約(判決文中にはその文言はない)であったとして,予定されていた期間を業務に従事させていれば報酬請求できるとした事例。


知財高判平27.6.18
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160910/1473436116
ソフトウェアの違法販売による損害額について,原審が著作権法114条3項を適用して実施料率50%として標準小売価格の50%とした判断を変更し,ダウンロード版の販売価格である定価の10%引き全額について損害を認めた事例。


■東京地判平27.6.2 
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160619/1466344794
Linux, Apache, MySQL, PHPの開発能力があることを前提に採用されたエンジニアが,実際にはそのような能力を有していなかった等として解雇された場合において,解雇の有効性が認められ,賃金の一部相当額について不法行為による損害賠償責任が生じるとされた事例。


■東京高判平27.5.21
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160104/1451917027
多段階契約方式を採用するシステム開発プロジェクトにおいて,後続工程にかかる契約が締結されなかった場合に,締結済みの値引き分を改めて請求できるか否かが争われた事例。


■東京地判平27.4.23
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160401/1459436860
SEO対策業務が,実際に行われたかどうか(報酬支払義務の存否)が争われた事例。


■東京地判平27.3.17
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160321/1458571081
リアルの店舗への会員登録によって生じるアフィリエイト報酬の支払義務の存否が問題となった事例。


■東京地判平26.11.28
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160902/1472821104
サイトの管理契約をユーザが解約した場合において,ベンダに対し,解約によって生じる損害(外部委託費用)の賠償を認めた事例。


■東京地判平26.10.1
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160922/1474520139
ネットワークバンキングサービスの障害によって,金融取引に生じた損害については,金融機関から見れば予見可能性がないとされた事例。


■東京地判平26.2.18
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160820/1471667998
ウィルス対策ソフトの使用許諾契約(クリックオン型)の成否が問題となった事例。


■東京地判平24.3.14
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160111/1452489389
システム移行調査契約,保守管理契約の法的性質が,請負か準委任かが争われた事例。


■山口地判平21.6.4 
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160418/1460989091
再委託先の従業員の不注意によって個人情報が漏洩した事故について,再委託先に対する損害賠償請求が認められた事例。


■大阪高判平19.3.27
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20161211/1481461570
他人のユーザID・パスワードを使って他人に成りすましてヤフーオークションにて落札行為を繰り返したことについて,私電磁的記録不正作出罪(刑法161条の2第1項)の成否が問題となった事例。


■東京地判平16.6.30
http://d.hatena.ne.jp/redips+law/20160228/1456586212
ビジネスソフトウェアの画面の著作権侵害の有無が問題となった事例。


読まなくてはいけない裁判例,まとめておきたい裁判例はたくさんあるので,来年もまた,少なくとも30個くらいのペースは維持したい・・