Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

IT法務に関する2013年の新刊10冊・一気に紹介

昨年は,「2012年IT・ネット法務・勝手10大ニュース」という記事を書いた。
http://d.hatena.ne.jp/redips/20121223/1356266198

今年を思い返してみると,国内IT法務ではそれほどネタがたくさんあるわけでもない。


そこで,ふと思い返してみると,今年はIT法務関連では多くの本が出版されたので,10冊,取り上げてみたい。


しかし,すでにIT法務書籍では,Business Law Journal2014年2月号のブック・レビューで丁寧に取り上げられているし,著名ブログ「企業法務マンサバイバル」でも取り上げられているので,時機に遅れた感はあるが・・


電子商取引法

電子商取引法

珍しくほぼ通読した。幅広いテーマについて,かなり深く書かれている。実務面では準則*1のほうがカバー率は高いかもしれないが,個人情報,契約の成立・方式などは準則よりも記述が深い。個人的には後段の各論よりも前段の総論がよかった。IT法務をやるには必読。準則については,今年から改訂作業の研究会メンバーに加わって,世間の要望と,書けることとのバランスについて少しずつ知ることとなったが,学者・実務家の書籍,論文とは役割も異なるので,仕方ないかなと思う。


インターネットの法律問題 (-理論と実務-)

インターネットの法律問題 (-理論と実務-)

これも話題性が高かった。まだ一部しか読んでいない。「理論と実務」という副題のとおり,「Q&A」「法律相談」系の本よりは理論や歴史的な部分に記述が厚い(例えば,6章「著作権」(岡村先生)では,ソフトウェアが著作権法によって保護される流れからコピーレフトの話,デジタル化・・といった歴史の話が中心となる。)。準則とも守備範囲は明らかに異なる。腰を落ち着けて読破したいのだけれど。


ソフトウェア取引の法律相談 (新・青林法律相談)

ソフトウェア取引の法律相談 (新・青林法律相談)

だいぶ前に出た印象だが,これも今年1月初版。一部のテーマのみ読んだ。テーマの網羅性は確かに高いが,それぞれの記述は正直なところだいぶ薄く,テーマはIT系でありながら,中身はIT法務固有ではない記述も多い。とはいえ,他のQ&A系の本よりもソフトウェア取引に関しては圧倒的なボリュームがあり,使いやすい一冊だと思う。


第2版 インターネット新時代の法律実務Q&A

第2版 インターネット新時代の法律実務Q&A

Q&A形式の本としては最新で,扱うテーマも「スマートフォンライフログ」「関連検索,サジェスト機能と権利侵害」「ゲームプレイ動画の投稿」など実務的かつ新しい。しかし,一つ一つのテーマは紙幅の関係上,深く突っ込んでいないので,これも調査のとっかかり用。


ソーシャルメディア活用ビジネスの法務

ソーシャルメディア活用ビジネスの法務

これもQ&A形式。一つのテーマに関する記述が少ない点については他のQ&A本と同様。正直なところ,まだほとんど読んでいない。


クラウド時代の著作権法: 激動する世界の状況 (KDDI総研叢書)

クラウド時代の著作権法: 激動する世界の状況 (KDDI総研叢書)

これもまだほとんど読んでいない・・。ロッカーサービスに関するクラウド著作権問題や,スリーストライクルールについてなど,特定テーマを深く取り下げたもので,研究論文集に近い。


良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方

良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方

企業法務マンサバイバル管理人の橋詰さんらの著書。これもだいぶ前だと思ったら今年だった。これは通読し,ふだん利用規約をあまり取り扱わない事務所のほかの弁護士にも勧めた。良書。


よくわかる共通番号法入門 ―社会保障・税番号のしくみ

よくわかる共通番号法入門 ―社会保障・税番号のしくみ

共通番号法については,今のところ唯一といってもよい本。岡村先生の他の著書と同様に,図表が多いのが特徴。


トンデモ“IT契約

トンデモ“IT契約"に騙されるな

すでに当ブログでも紹介した。ベンダにとって脅威の書とも言われるが,もともとベンダの契約条件が良過ぎた面があるし,この本に書かれているユーザの要求,要望を説得できる力をベンダは身に付けるべきだと思うので,本書の登場によりユーザ・ベンダ間の契約交渉が一つ先のステージに進むことを期待したい。


電子書籍・出版の契約実務と著作権

電子書籍・出版の契約実務と著作権

うっかり忘れるところだった。雛形の解説中心。電子書籍関係の法律本は今のところまだほとんどないので,何かあった時の参照用。