あるボードゲームのウェブサイトを見たら,ちょっと気になる記述が見つかった。
【King's Valley】
http://regencyapp.com/kingsvalley.html
この中に,
という記述がある(こういうのにふと目が止まってしまうのが職業病)。
著作権法が定める「著作物」は,「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定めるが(2条1項1号),典型的には「アイデア」は含まれないとされる。ゲームのルールなどは,それがルールブックとして創作性ある表現として具体化されれば,著作物といえるかもしれないが,ルールそれ自体は,著作物ではないだろう。
強いていうなら,駒,ボード,パッケージなどのデザインについては著作物としての保護を受ける余地はある。
ただ,この場合,ボードは市松模様でなくともよいとか,駒は丸くなくても違う絵柄でもゲームはできる,などと,こだわりを捨て始めると,やはり著作権侵害を回避しながら複製ができることになる。
特許で保護できるか?というと,これもまた難しい。特許の対象となる「発明」は,「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」とされ(特許法2条1項),これまた,ゲームやスポーツのルールなどは人為的な取り決めであって「自然法則」を利用しておらず,発明にあたらない典型例だと教科書には説明してある*1。
ほかにも,不正競争防止法を持ち出すことも考えられるが容易ではない。こう考えると,新規のボードゲームを考案したとしても,その用具製造販売や実施について,独占的に権利を保持しようとするのはかなり難しいことのように思える。
ただ,まだ別の手段はある。
今,少しずつブームになりつつある「どうぶつしょうぎ」。これは,いまさら説明するまでもなく,北尾まどか女流がルールを考案し,藤田麻衣子女流が,盤,駒のデザインをした「ミニ将棋」。この「どうぶつしょうぎ」のロゴについては,「片上まどか」*2さんを権利者として商標登録されている*3。
これがあれば,権利者の許諾なくして「どうぶつしょうぎ」のロゴを使ってゲームを販売することはできない。また,「どうぶつしょうぎ」に関して言えば,駒の絵柄も独特であり,それ自体が著作物性は否定できないから,あの絵をそのまま使ってバッタもんを作ることもおそらくご法度。そういう意味では,「どうぶつしょうぎ」は,商標と,一部について著作権で保護されていることになるだろう。
なお,「オセロ」については,株式会社メガハウスが商標権者となっている。そのため,同じゲームを「リバーシ」という名称で販売していることも多い(世界的にはこちらの名称のほうが有名のようだ)。