デジタルコンテンツの世界では容易に模倣,パクリが可能になると言われているが,どこまでセーフでどこからアウトなのかを判断するのは容易ではない。
※本記事は,【法務系Tips Advent Calendar 2014】の企画のもと,書いたものです。
スマホアプリに関して,「著作権侵害だ!」という警告を受けたという相談や,逆に,「あのアプリはうちをパクっている。許せない」という相談を受けることがある。現実に,単にコンセプトが共通しているというだけにしか見えないアプリに対して厳めしい警告状*1を送ってくるケースもある。
セーフかアウトかという判断はプロであっても容易ではなく,裁判所によって同じ事案でも判断が分かれるケースは珍しくない。倫理的な問題はともかくとして,弁護士としては,主に著作権侵害に当たるかどうかを慎重に判断しなければならず,判断を悩ませる。
著作権侵害(複製権・翻案権)の判断としてリーディングケースとなった事案としては,ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー事件(最判昭53.9.7)と,江差追分事件(最判平13.6.28)が有名である。しかし,これらの最高裁判例の示した規範を目の前にしても,なお,判断は容易ではない。
ワン・レイニー・ナイト・イン・トーキョー(最判昭53.9.7)
著作物の複製(著作権法21条,2条1項15号)とは,既存の著作物に依拠し,その内容及び形式を覚知させるに足りるものを再製することをいう
作物の翻案(同法27条)とは,既存の著作物に依拠し,かつ,その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ,具体的表現に修正,増減,変更等を加えて,新たに思想又は感情を創作的に表現することにより,これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為をいう。そして,著作権法は,思想又は感情の創作的な表現を保護するものであるから(同法2条1項1号),既存の著作物に依拠して創作された著作物が思想,感情若しくはアイデア,事実若しくは事件など表現それ自体でない部分又は表現上の創作性がない部分において,既存の著作物と同一性を有するにすぎない場合には,複製にも翻案にも当たらない
本エントリでは,法律論をどうこうするというよりは,とりあえず,どこから先がアウトでどこまでがセーフなのか,その境界線を考えるのに有用と思われる裁判例を10個挙げてみた。見た目に分かりやすい,イラストや画面デザインの事例を中心に,著作権侵害が認められたか否かを考えて頂きたい(左側が原告)。