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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

医薬品ネット販売規制訴訟「判決要旨」

ちょっと前の話しになるが,先月の医薬品ネット販売の権利確認請求訴訟について,判決要旨がアップされていることを知った。


http://www.kenko.com/company/pr/archives/2010/03/post_81.html


事件の内容は言わずもがなであるが,これが最高裁の判断まで出れば(現在控訴中),有名な憲法判例として歴史にも残るかと思う。原告の「ケンコーコム株式会社」の社長は,前々職が同じで(といっても知り合いというわけではないが),OBのメーリングリストの中でも,支持者が多かった。というわけで,私もまったく影ながら注目し,応援していた。


結論の要旨は,

本件規制は,前記ア(イ)の規制目的(一般用医薬品の適切な選択及び適正な使用を確保し,一般用医薬品の副作用による健康被害を防止すること)を達成するための規制手段としての必要性と合理性を認めることができ,医薬品の副作用(略)及び情報通信技術等をめぐる本邦の現状の下において,営業活動の態様に対するより緩やかな制限を内容とする規制手段によっては上記の規制目的を十分に達成することができないと認められる以上,立法機関(略)の合理的裁量の範囲について,職業活動の内容及び態様に関する規制として,あるいは狭義における職業の選択の自由そのものに制約を課する規制に準じて,広狭のいずれに解するかにかかわらず,その合理的裁量の範囲を超えるものではないというべきであり,本件規制及びこれを定める本件各規定を薬事法施行規則に加える改正省令中の本件改正規定は,憲法22条1項に違反するものということはできない。


となっている。


やや専門的な話になるが,

営業活動の態様に対するより緩やかな制限を内容とする規制手段によっては上記の規制目的を十分に達成することができないと認められる以上


という表現を用いているところからすると,裁判所は違憲審査基準を厳しく捉えたものだと考えられる。判決中にも有名な薬事法違憲判決(最大判昭和50.4.30)を引いていることからすると,同様の基準を適用しているのだろう。しかしながら,対面販売と通信販売の違いについて延々と事実認定した挙句,規制目的と達成するには,通信販売を規制せざるを得ない,的な結論に至っている。


私自身は,原告側を応援していたからだともいえるが,裁判所の事実認定には「ホントかなー」と疑問を挟みたくなる部分もあり,結論には納得していない。ただ,上級審では違った結論が出る可能性もあると思っている。


なお,この判例の論理展開については,憲法適合性を論文で書く上では参考になると思う。