Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

新人弁護士の給与システム

そろそろ新61期の新人さんたちが,最初の給与を受け取る時期である。


新人弁護士は,いきなり独立した人を除くと,多くは給料をもらって生活することになる(ここではインハウスローヤー(企業・団体内弁護士)の話はおく)。この給料の決め方(給与システム)は,通常のサラリーマンなどと比べて実に多種多様で,しかも,相当な格差社会である。


給与システムのパターンはかなり多いと思うが,私が知る例では,大きく分けて2つのパターンがある。


(1)年俸制サラリーマンに近いもの


オファーレターで年俸が提示され,それを例えば18等分し,その1/18ずつを毎月受け取り,年2回のボーナスとして3/18ずつ受け取る,というようなもの。大手事務所で見られる。このパターンは,私の前職,前々職サラリーマン時代とほぼ同じ方法である。高いところだと,いきなり年間\15 millionぐらいだというから,ちょっと信じられない。


(2)歩合制


顧客からボス弁ないしは事務所が受け取った売上をベースに給与が変動する,というもの。たくさん事件をこなせば報われる仕組み。そうはいっても,月額最低保証額みたいなものが決まっているところが多い。最低保証額のラインは様々で,低いところだと,「修習生と同じ」というところもあるようだ。変動額の決まり方も事務所による。一般に,最低保証額が低いところは,売上にセンシティブに反応し,最低保証額が高いところは,「たくさんがんばったら上乗せするよ」という感じのようだ。


上記(1)(2)とは別の軸で,さらに,個人事件*1の取り扱いが異なる。


事務所によっては,「アソシエイト」のうちは,個人事件禁止,というところもあるらしい。「禁止」の意味するところがよくわからないが,知り合いから仕事を頼まれたら,断れ,ということなのだろうか。それとも,事務所で扱っている事件と同じようにプールして扱っているのだろうか。


受任できる場合,自己に立った売上をそのまま懐へ入れられるのか,一部を事務所(ボス)に水揚げされるのか,というのも事務所によって異なる。サラリーマンで考えてみれば,個人事件は副業にあたるわけで,副業を許容する会社において,従業員が副業をした場合,その売上の一部を会社に寄こせ,というのは変な話だ。しかし,通常の日中に,ボスが賃料を支払っている事務所で,個人事件を行うということになれば,やはり一部を労働の一部が供給できなくなることに対する補償という名目で支払うというのはむしろ合理的だと思う。


まあ,いろんな要素があるので,結果論として「年収いくら」みたいな話はできるとしても,「見込み年収いくら」,という話ができるのは,上記(1)のパターンで,かつ,個人事件をほとんどやらない(やれない)人ぐらいに限られる。ただ,上で書いたように,多い人は年間15 millionが約束されている一方,少ないと最低保証は修習生と同じ(これだと3 millionぐらい?)となる。仕事上でのスキルや実績が評価される以前から,これだけの差がついた状態でスタートすることになる。もっとも,給料の額だけでその人の弁護士としての格であったり,ひいては人生が評価されるものではないが。

*1:事務所によって定義の仕方はさまざまだろうが,簡単にいえば,ボスが見つけてきて「やっといて」といわれる仕事ではなく,自分で取ってくる仕事のことをいう。