
いきなり下手な落書きから始まりましたが,本エントリは,法務系Advent Calendar 2020のエントリです。 14日のhrgr_Ktaさんよりバトンを受けました。
毎年テーマに悩みます。割とAdvent Calendarの流行りは,個別の法律実務・法解釈の話ではなく,キャリア論,人生論,仕事論などのトピックが多いので,今回もあまり夢のない話ではありますが,若手の弁護士,修習生,法科大学院生のみなさんにキャリアを考えるきっかけとなるような話を書きます。
この時期は,ちょうど弁護士登録した時期でもあるので(あと数日で13年目に突入),これまでを振り返ったりするいいきっかけになりました。特に,何かのメッセージを押し出そうというのではなく,さまざまな弁護士の12年間を,座談会風にお届けすることにします。最初にお詫びしておくと,1万字を超えてしまったのでので,めちゃくちゃ長いです。
◆ 目次
プロローグ
RK。 61期。パートナー2名,アソシエイト4名の知財ブティック系事務所所長。設立3年目。意識高い。
KT。74期。修習が始まったばかり。弁護士にはなりたいと思っているが,他へも気移りしている。軽薄。
R先生,修習がやっと始まりましたが,弁護士の仕事にバリエーションがあり過ぎて自分が何を目指してよいかわかりません。友人が始めたスタートアップからも誘われていて,弁護士以外の選択肢にも目移りしてしまいます。

迷うことなどないだろう。
知財一択だといいたいところだが,ちょうど地方から
Tが上京するので,同期が集まることになってる。今ならコロナも少し落ち着いてるし,おもしろい連中ばかりだから参考になるはずだ。一緒に来るか?

はい,喜んで。
ここで登場する同期の弁護士らはすべて架空の人物で,特定のモデルもない。私と交流がある人(同期に限らない。)から聞いた話を混ぜたりアレンジした上で,妄想を追加している。
仮に特定実在の人物やエピソードと似ていることがあるとしても、それは偶然である。また,各登場人物の発言中の意見に渡る部分は私個人の意見を示すものでもない。人物名をAとかBにするとわかりにくくなるので,流行りに乗ったイラストを追加したが,敢えて特定のキャラに寄せることもしていない
*1。

今日は,修習生の
KT君を連れてきたよ。弁護士になるというところは決めているけど,10年先くらいのイメージがなかなか持てなくて話を聞きたいんだそうだ。

どうぞよろしくお願いします。

修習生って今,
70期くらいだっけ?

いきなりとぼけるよな。
74期だよ。もう我々,今月で丸12年だし。

そんなになるかあ。派手に新人を採用するという考えがまったくないから若い人との接点もほとんどないんだよね。
UT。61期。数名の弁護士で運営する経費共同型の事務所に所属。スタートアップ特化型の事務所に5年勤務した後,独立。取扱業務は企業法務全般。中高一貫名門校のサッカー部。派手好き。
今年はコロナの影響もあるから採用の状況はどうなるかわからないけれど,まだ引き続き売り手市場になりそうなんだよね。

いや,そういうわけでもなさそうです。大手の採用は絞ってるって聞きます。
TG。61期。修習地である地方で就職し,2年目で独立。自宅・事務所・裁判所はすべて徒歩数分圏内。弁護士会副会長経験あり。イソ弁1名。事務員3名あり。クルマは自分用にAMG E53と,奥さんのGLC。悠々自適。
で、KTさんは今日はどういうことが知りたいの?
KM。61期。30名ほどの弁護士が所属する経費共同型事務所のパートナー。二度の出産も,いずれも短期間で復帰するなど剛腕型。ダンナさんは証券会社勤務(弁護士ではない)。
弁護士は儲かるのか。

ぶっちゃけ弁護士の仕事は
どれくらい儲かるんでしょうか。儲からないって話ばかりが聞こえてくるので,今,いきなりスタートアップに就職してしまおうかとも悩んでいるんです。
いきなりストレート投げ込んできますねw 若い。ここは一番儲けてそうな
Rさん,どうなの?

ボラティリティ大きいから一般論では何ともいえない。まあでも,ここに来ている人はみんなそこそこ稼いでる人たちばかりじゃないの?

今日はそんなフワッとした答えを彼は望んでないでしょ?うちはもうイソ弁をこれ以上増やすつもりないから,
売上は6000-7000くらいで頭打ちだけど,経費とか安いからほとんど所得。現預金は増える一方。ふるさと納税はネットスーパーの感覚で利用して肉と魚介類はほとんど買わない。

すごいな?やっぱり地方って派手,派手。

いや,とうとううちの支部にも新興事務所も進出してるし,みんなが儲かってるわけじゃない。けど,うちは特に田舎で,東京と違って競争が厳しくないから,営業ができて,ある程度ちゃんと仕事ができれば,新興に満足できない層の良質の仕事が回ってくるようにはなってるけども。あとタイムチャージじゃないから事務局をうまく使って効率的に仕事すれば
逆に単価は高いんじゃないかな。

私は細々と自分のお客さんの仕事をしてるだけだから,
T
さんの半分にも及ばないけど,それでもダンナの稼ぎよりは全然多い。

ダンナさん,証券会社だったよね。

私が
M
ちゃんのダンナさんと同じ証券会社でインハウスしてるわけだけど,自分の給料は
Mちゃんのさらに半分くらいかな。
KS。61期。任官確実と言われ,四大からも内定を得ていたが修習後から証券会社でインハウスを続ける。最近,産休を終えて復帰。副業が解禁されたため,プライベートプラクティスを開始した。

同じ一般民事でも,全然違いますね。
T
さんと違ってオレなんか全然少ない。
IO。61期。一般民事系の事務所に4年ほどイソ弁をした後,首都圏近郊で同期と独立。その後また別の同期と共同事務所経営。一般民事中心。ワイン,料理好き。いろいろと緩い。

やっぱり東京の方が競争も激しいし,顧客の目も厳しいよ,絶対。自分が東京だったらとても仕事が取れる気がしない。

かなり余裕がありそうなんですが,仕事はやはりお忙しいんでしょうか。

いや,全然。5時には終わるし,だいたい毎晩飲む。サイゼとか回転寿司の一人飲みを愛用してる。
仕事はどうやって取ってきたか。

儲かる以前に,そもそも仕事ってどうやって取ってるんですか。ゼミの先輩は,弁護士4年目だけど
事務所の案件しかやったことないって言ってましたし。

そこはブティック系はわかりやすい。ブログなどで専門分野の情報発信して,セミナーや原稿の依頼が来て・・とか認知度を高めていくうちに自然と仕事の声がかかったりするものだ。でも,自分に
声がかかるまでは5-6年かかったし,自分の食い扶持を全部賄えるようになるまで,そっからさらに2-3年くらいかかったから,それまでアソシエイトで仕事のクオリティを追求するっていうのが重要だ。

自分は特にわかりやすい派手さがないから,サッカー部の先輩とか,顧問先の社長の友だちとか,合コンとか,なんだかんだで
人付き合いをよくしているうちに仕事につながったっていう感じかな。独立したときはマジで何も仕事なかったから,どこかに就職することも考えてたけど。

あの独立直後の事務所やばかったよねーw

唯一の顧問先の社長が不動産をいくつも持ってて,余ってるワンルームを月5万で貸してもらってた。
顧問料と相殺だったけど。はじめのうちは仕事なくて
昼間からYoutube見てた。

一般民事の場合は紹介が重要だね。現にオレはここにいるみんなから割と離婚とか交通事故の案件紹介して貰ってるし,四大の人が割と富裕層の離婚とか相続とか紹介してくれるのはありがたい。

私は最初は
朝活だったかな。勇気を出して経営者の会みたいなところに顔出してた。朝7時からパワーブレックファーストw 女性や弁護士が貴重だったからちょこちょこ案件が来たかな。今は普通に回ってるし,子どももいるから朝活はムリ。

やっぱり地方だと,税理士とか,そこそこ有力な企業の社長とかと親しくなると,その人が客を紹介してくれるからね。今でも
ゴルフ営業重要だし。平日に月3回はゴルフ行ってる。ゴルフ場も遠くないから午後2時くらいからなら裁判所の期日入ってても大丈夫。あと,裁判所から数年目から
管財人が回ってくる。

そうかー,みんなそれぞれ苦労,工夫してるよね。私はインハウスだから営業の必要性がないけれど,副業でできるようになったからこれからは営業しないとなー。うちの業界(証券)のことはそれなりに詳しいから時々社外からも相談を受けたりするけど,勉強会とかを通じて少しずつ開拓するつもり。M&Aの関係で暗号資産とかもやるようになったし。

あー,遅くなりましたー

出たよ,毎回遅刻して「オレ忙しい」アピール。
TM。61期。四大。M&A・コーポレート中心。米国留学,ロシアでの提携事務所勤務1年間を経て,パートナー1年生。小心者。

修習生のためにみんなどれだけ稼いでるか答えてるんだけど,
四大のパートナー様がいくらもらってるのか一番知りたいらしい。

は?いきなりそれ?全然っすよ。

プリンスがNY Bar受かって四大に入ると年収3-4000万円から,っていう報道があったくらいだから,パートナーなら
1億届くくらい?

んなわけないでしょ。●●くらい。

へー。意外にオレ,四大のパートナーといい勝負してるかも。しかも働いてる時間全然少ないから
オレの勝ちだな。

四大でもピンキリだよ。同期でも▲
▲とかはスゲー稼いでるし。

あー,▲
▲は,うまいことやってる感じがするな。外から見ててもわかる。実力もあって目立つ人は青天井だね。

まあ,仕事が取れるかが重要なのは否定しないけど,生きてくためには
いかにして「切られないか」っていうのも重要だよね。
理想は全然依頼がない顧問先。

それを正面から言っちゃうw?仕事が来ないなら「何かありませんか?」って聞いてみたり,「特に御用がなければスポットに切り替えますか?」ってやったほうがLTV
*2が上がるはず。
CS*3の視点が足りないよ,この業界。

ところで,パートナーになると仕事をとってこないとダメなの?

いや,実際は自分で
営業して取れる人なんて一握りで,自分も自分の客なんてほとんどいない。まあ,仕事の取れないパートナーがいつまでここにいられるかわからないけども。だから仕事くださいよ,
K
さん。

実際,うちはガッチリと食い込んでる事務所が2つあって,
部長が変わらない限りは他を使いにくいかもね。

早く部長になってよ。でも
K
さんが部長になる前に,自分がクビになるな。

四大に行くのが一番稼げるってわけでもないんですね。
(誰、こいつ?失礼だな)そりゃ,
稼ぐんなら一般民事でしょ?
T
さん。
稼ぐならレバレッジ効かせることでしょ。
Rなんてアソがたくさんいるんだから一番稼いでるに決まってる。

最初の質問が稼ぐってところから始まったけど,そもそも,稼げるところを選ぶってのはどうなの?みんなも最初から稼げる分野を選んで就職したりしたわけじゃないでしょ。
何ができるかってことじゃないの?
専門性は必要か。

そうなるとやっぱり専門性ですよね。
自分はM&Aとか興味あるんですが,それこそM&Aは星の数ほど専門家がいて埋もれちゃうんじゃないかなと思って。
(どうせオレは界隈ではモブだから埋もれてるよ)必要な専門家の数はマーケットの大きさで決まるからなあ。M&Aはそれなりにマーケット広いから,埋もれるとかどうとかは気にしなくてもいいと思うけど。逆に,例えば知財とかって,マーケットそんなに大きくないはずなのにやたらと専門家の数が多くない?

知財の専門家を名乗る人は何千人もいると思うけど,それをメインで食べてる人なんて数十人くらいじゃない?知財に限らず,この業界で
専門家を名乗ってる人の半分はハッタリ・ニセモノだと思ってる。

ガイドラインとかみればわかるようなことをブログで書いてドヤってるやつのことですか。

そういうのをすぐに叩いて「俺の方が詳しい」ってやる風潮は良くないよ。若い人って,実績積む前は背伸びするしかないわけだし。まあ自分も,例えばフィンテック関連ビジネスの案件を
慣れないことにビクビクしながら何とか1件やったらもう専門家ですって顔をしてるわけだからね。

大手は高いっていうイメージがあるけど,若手が一定の水準に達するまでにかけた時間をチャージしてるわけじゃないからね。この前なんて,顧問の先生に聞いたら調査費用とかで50万円とられた,っていうクライアントが来てたけど,うちの専門家に聞いたら0.2時間で,12000円しか請求しなかったっていう件もあるよ。M&Aみたいにゴリゴリと時間をかける分野はまだいいけど,レギュレーション関係は,
極めていくとチャージが稼げないっていうジレンマはあるからね。

まあでもそれってやりようがあって,信頼を得ることで仕事の幅が広がるからトータルではプラスだよ。

・

一般民事に専門性とかは関係ない。「一般民事」が専門性。何だって来たものはやるしかない。

専門って,別に法律雑誌に論文書いたりすることじゃないからね。効率よく高いクオリティでサービス提供できるか,ってことだから。
一般民事を広くカバーしてるっていうのは,強力なスキルだよ。自分は結局,12年たったけど,離婚・相続・債務整理・交通事故は1回もやらなかったし,これからもやれる気がしない。

しかも専門って,別に法分野に限らないし,言ったもの勝ち。最近だとパブリック・アフェアーズとか,リーガル・デザインとか,プロダクト・カウンセルとか,専門なのか,職種なのか,よくわからない言葉が入り乱れてきてるから要はブランディングかなあ。ただ,特定分野に深く入り込んでいくと,自分だけが知ってる感じがして
自己陶酔状態になれるし,専門分野を持ちたいという気持ちはよくわかる。

それに専門分野って,「知財」とか「M&A」とかそんな漠然としたものじゃなくって,最初のうちはスゲー細かいところについて,そこは自分だけが知ってる,っていうのが重要なんだよ。

私は専門性がないといけないとか
焦らなくていいと思う。本人が特定の専門性を追求することが好きならば構わないけれど,逆に潰しがきかなくなるリスクはあるし,専門性があるからこそ生き残れるわけでもないよね。
専門性がなくても,仕事は楽しくできるし,仕事は取れる。

そう,専門性があると,逆に「
ほかのことはできない人」
って勘違いされがちだからね。ブティック事務所だって顧問先があるんだから,企業法務全般は取り扱っているわけで。あまり専門性を前面に出すと間口を狭めるリスクはあるね。

まあ,仕事が取れるかどうかっていうのは一部を除いて専門性というよりは
全人格の総合評価で決まるって感じだよな。
SNSは使うべきか。

結局また仕事が取れるかどうかっていう話題に戻ってしまいますね。それとも絡むんですが,自分は業界の情報収集にはSNS、特にツイッターを使ってるんですが、やっぱりツイッターとか,やっといた方がいいでしょうか。
ツイッター,フェイスブック
(ホントは仕事の愚痴ばかり書いてる匿名垢はあるけど)いやー,やってないからよくわかんないな。
(子育て垢の他に2つのサブ垢があって半分ツイ廃だけど)たまに覗くくらいだからわかんないだけど,仕事にはあんまり関係ないんじゃないかな。そこはアルファツイッタラー(死語)の
R
さんに聞かないと。フォロワー何人いるんだっけ。

えーと今、
1万5千くらいかな。
スゲー。

やってないのに
なんでスゲーってわかるんだよ。

自分はツイッターやっててよかったと思うよ。少しでもタメになることを書こうと思うと,積極的に情報集めるから勉強のきっかけになるし、結果的に情報も集まってくるし。わざわざ
「ツイッターを見て依頼することにしました」って言う人いないけど,依頼のきっかけになったり,認知度を上げる役には立ったんじゃないかな。採用もツイッターで告知しただけで応募がそこそこあったわけだし。

地方のマチベンにはツイッターが仕事に役に立つってことはないだろうなあ。前はやってたけど「先生がこのまえ行った蕎麦屋よりもっとおいしい店がありますよ」とか依頼者に言われてウゼーと思ったからやらなくなった。

ツイッターはともかく,クライアントとはFacebookでつながってる人が多いかな。親しいところだとメッセンジャーでやりとりしてる。
U
はクライアントを意識した意識高い投稿してるよねw。「
クライアントのみなさまに感謝」とか「難しい事件で勝訴的和解勝ち取りました」とかw。自分は個人の依頼者中心だからFacebookは怖くて依頼者と繋がれない。

やっぱりインハウスだとSNSで仕事のこと発信するっていう発想すらないな。

修習生のアカウントは研修所が特定してウォッチしてるっていう話も聞くので,しばらくは大人しくしときますけど,やっぱりSNS使った方が良さそうですね。

まあでも,
ツイッターは実世界のほんの一部だからね。ここでもやってない人が多数派だし。
ツイッター弁慶の同業者もたくさんいるよ。
YouTube
YouTubeはどうですか?

え?
ユーチューバー?まったく発想がなかった。

あれは手間がかかりすぎるでしょ。単に何かのプレゼン動画撮ったままアップしても誰も見ないから編集しないといけないし,編集は手間がめちゃくちゃかかるし。
やってみたんだw。さすがなんでもチャレンジするんだね。

そもそも
弁護士の動画なんてニーズないでしょ。ほとんど見ないんだったらコスパ悪すぎる。趣味でやるならともかく。
(やっぱり昭和生まれの感覚はそうなんだろうな。)
独立のあれこれ。

ところで,途中で独立,転籍されてる方も多いんですが,きっかけというか,いつ頃からそういうのを意識してたんでしょうか。

一般民事系はやっぱり早いよね。自分は最初に事務所入る時から長くて2年だと思ってたけど,入ってみて,こりゃ
1年もいれば十分だわと思った。2年目になってすぐに独立準備。

どうして早く独立しようと思ったんですか。

自分の案件が増えてきてボスの仕事がやりにくくなったってのはあるし,どうせ独立直後は苦労するんだから,背負うものが少ないうちにやっといた方がいいだろうと。

やっぱり
独立当初は苦労したんですか。

いや,それが
楽勝w 仕事が少ないときもあったけど,その時間にゴルフの腕を上げたのは結果的によかった。

自分の場合はそういう計画的な独立じゃなくて,パートナーと折り合いが悪くて
居づらくなったっていうパターン。だから,行き場もさっき話したように顧問先の社長が貸してくれたワンルーム。

でも結果的に早めに独立したのはよかったんじゃない?

最初は確かにいろいろやりましたね。
1人の時はマジでメンタル危なかったけど,一緒にやろうって言ってくれたメンバーと事務所をやるようになってからは経費も安いから食えない心配は無くなってきたかな。でも,やっぱり突然出なくちゃならないっていうのは辛いから
「独立は計画的に」だね。

自分の場合は,ボスが高齢化でだいぶボケてきちゃって,そのまま一緒にいると自分も危ないなって感じて出てきた。
3時くらいになるとボスの友だちの爺さんがやってきて事務所が碁会所になってたし。

でも,そのまま
ボスが死んだら全部のお客を引き継げたんじゃないの?

いや,もう1人,兄弁がいて,多分その人に流れるだけ。その兄弁と相性良かったわけじゃなかったし。結局順当にパートナーになったんは
K
さんと
M
だけ?

私は,ボスの仕事をする量が減って徐々に給料も減らされて,最初の産休に入るところで「戻ったあとは完全歩合制で」って言われただけ。その間にボスも別のアソ採用しないといけないわけだから仕方ないしね。でもそのころすでに8割は個人事件やってたから産後2ヶ月でフルタイムで復帰したかな。
病院から電話で弁準にも出てたし。

それがすごいよなー,
インハウスだとガッツリ休めるからね。結局私は1年4ヶ月休んだ。

大手は客がいないとパートナーになれないとか言われるけど,さっき,
M
は「自分の客はいない」っていってたよね?去年のプロモーションのときはどうしたの?

ほんとに
客取れないとパートナーになれないんだったらほとんどの人なれないよ。うちは上から推薦されれば比較的年功序列でパートナーになれるけど,実質は名ばかりで
やってることはシニアのときと変わらない。自分の客はほとんどいないから独立なんてあり得ないなー。
U
,お前の事務所で雇ってよ。
2500万でいい。

その感覚があり得ないっつうの。
アソに月50払うのも怖いなって思うから自分はアソなんて雇わないわけだし。そう考えると前のボスはよく自分も含めてアソを何人も雇ってくれてたと思うよ。

うちは10年目くらいの中堅弁護士の採用もやってるけど,待遇はわからないなあ。でも2500万は出ないよ。
その半分なら出すかもしれないけど。
将来(これからの10年)について。

そうすると大手でパートナーになれたとしても,その先がなかなか見えてこないですね。
(また,こいつか。否定はできないが,こいつに言われると腹が立つ。)いやー,
ここまで来たら独立はないから,お払い箱になるまではしがみつくしかないよね。その先は知らんけど。

先は見えないねー。最低でもあと20年は働かないといけないだろうけど,
10年先すらまったくわからんわ。

もう自分の仕事に発展性もないから,
飽きた。あと10年なら我慢できるから稼げるだけ稼いで違う仕事するか,
ゴルフのシニアプロでも目指すかな。

周りを見ていると一般民事の場合,ベテランになってもそれなりにやっていける気はする。まあ、依頼者がどんどんおじいちゃんおばあちゃんになっていきそうだけど。

自分で仕事しなくても子分たちが稼いできて事務所にお金落としてくれるようになるなんていう,うまい話はない。後輩たちが仕事もしないでエラそうにしてるやつに貢いでくれるわけないから
若者に負けないように食らいつくしかない。

どこまでいっても楽できないのかー。来年,上の子が小学生だし,下はまだ2歳だからだいぶ先は長いんだけど。今年,コロナの影響で新件少なくて,もうこのまま終わっちゃうかずっと心配だったし。
S
は部長まであと何年?

女性管理職増やしたがってるから,部長にはなれるかもしれないけど,会社に残るなら法務は一回出たいな。実は経営企画か,系列のVCに
異動の希望を出してる。

法務部長がゴールだったらその発想にならないけど,もっと上を目指すなら他の部署を経験しとくってわけか。

そういうのじゃなくて,
T
さんも言ってたけど,飽きたっていうのはあるかな。多分みんなより全然変わり映えしないよ,私の仕事。同じことが多すぎる。副業を始めたのも,新しい刺激を欲してたから。

みんないろいろ考えてるんだなあ。特に自分は何も考えずにこのままずっと今の仕事を続けていくだろう,くらいに思ってたよ。

まあ,なるようにしかならないからあんまり考えないほうがいいかもなあ。10年前なんてとにかくボスへの不満しか頭になくて,今の状況をまったく想像していなかったわけだから。

自分の場合,弁護士っていう枠を外れない限り,もう新しい刺激を気軽に味わうっていうのは無理な気がする。地方だと弁護士という枠の中には
バリエーションないから新規業務開拓とか言われても,それはキラキラした東京かせいぜい大阪の話。だからシニアプロ挑戦か,バリ島にでも移住する。
T
さんの場合,ほんとにプロテストとか受けたら受かりそうな勢いだからな。そう考えると,オレは事務所から出たら何もやれることないな。留学のあとにロシアにも行ったけど,ほとんど意味なかったし,英語も全然できないし。自分の客だと言えるのは1社しかないし。

そうやってまた同情を集めようとしてる。その手を使って客とかボスに放っておけないと感じさせるんだろうな。

やらしいやつだ。

ロースクールのときからそういうところは変わってないよね。みんなの同情を集めながらも結局,テストでいい成績をとっていくところ。

まあでも,お互い経験した道が違うのに,こうして集まると毎回盛り上がるってことは,
みんなで事務所作って得意なところでカバーし合ったら結構楽しくていいんじゃない?

あ,それ作ってよ。入る入る。副業やる事務所として快適そう。

友だち同士だからのノリで集合するのはやめた方がいいよ。最初の事務所出たあと,ここに来てない
SSと一緒に事務所始めたけど,1年もしないうちに喧嘩別れしたの覚えてるでしょ?今では連絡も取ってないし。
SS。61期。一般民事系の事務所から3年後に独立し,その後IO
と合流して共同事務所となるも1年後に解散。その後,2-3年ほど前に「自由と正義」の後ろの方のページで見かけて以降,行方知れずとなっている。

そうだったそうだった。前はこの集まりに
SSがいたし,
I
となら絶対気が合うと思ったんだけどね。

一緒に仕事すると見たくないものまで見えてくるからね。
エピローグ

すみませーん,東京都の要請で閉店時間となりますので,お会計をお願いします。

早いな。もう10時か。じゃあ,いつものやろう。男はカード2枚,女子は1枚出して。
テーブルの上に,各自指定された枚数のクレジットカードを置く

何が始まるんですか。

カードロシアンルーレットだよ。当たったカードの人が払うの。シャッフルするから
K君

が引いて。

稼ぎに応じて確率変えようよ。せめて
R
と
T
は3枚ずつ。

いいよ,じゃ,あと1枚。ん?16万8000円か。一人だと苦しいからカード2枚に分けて払うことにしよう。
K
君,2枚引いて。

責任重大じゃないですかー。

えいっ,これとこれ。

マジか・・・・
2枚ともオレのやつ・・・死亡

本日はありがとうございました。大変参考になりました!
・・結局,KT
は修習を終えるもスタートアップに就職し,法務とは縁のない仕事に邁進し,数年後には
や
に仕事を依頼する側になる。本人は弁護士のプラクティスを行うことなく一生を終えたという。
(おわり)