Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

IT弁護士の過疎化

今週の日経ビジネス(2009.1.26号)の「ビジネス法務」のテーマは「IT弁護士の過疎化」(松田政行弁護士)である。


前半の問題提起部分では,

IT産業は,極めて複雑な法を運用する産業であり,知的財産権と法務の処理に相当数の弁護士が必要な産業なのである。

とした上で,

IT分野を専門とする弁護士の数は東京が380人,大阪が60人なのに対し,名古屋は10人,福岡は5人,札幌は2人しかいないという。

として,絶対数も少なければ,偏在しているという問題点が指摘されている。


本論とは外れるが,気になったのは,上記の「IT分野を専門とする弁護士の数」をどうやってカウントしたのか,である。「日本弁護士連合会・専門委員会などの推計によると」としか書かれていないので,何ともいえない。


確かに,一口にITといっても,幅が広い。実務を始めて1カ月足らずではあるが,そのことをひしひしと感じている。IT分野に関わる法律については,ロースクール時代から含めて,少しずつ知識を蓄積してきたつもりではあるが,まだまだ知らない分野がたくさんあったのは当然のこと,制度の運用実態であったり,各種裁判例であったり,常に新しい知識・経験を得る毎日である。


そして,「IT産業にかかわる法分野」の広さ・深さに関する事前リサーチが足りなかったな,と感じたことに加え,もうひとつリサーチ不足を感じたのは,「この分野の専門家の数」である。以前からこの分野に強い弁護士を何人か知っていたが,実務を開始して,個別の案件に関して調査していくと,意外にニッチなところまで専門的に取り扱っている弁護士がいることを知った。とはいえ,東京に380人もいるのかどうかは何ともいえないが。


そんなわけで,この分野におけるスペシャリティを確立していくにはまだまだ精進が必要であるが,ここで取り上げた日経ビジネス記事でも述べられているようにマーケットは大きいので,非常にやりがいある分野である。