先日,東弁のインターネット法律研究部の定例会で,インターネット系企業のインハウスローヤーの方々を集めたパネルディスカッションのモデレータを担当した。
登壇したパネリストは,グーグル,ヤフー,LINE,カカクコム,ドワンゴのインハウス5名。企画者の自画自賛ながら,なかなかこれだけの企業の方が揃う機会は珍しいのではないか。多くは60期代の若手で,当部会にも若手が多いので,キャリア・プランニングの参考にもなるだろうと考えた。
もちろん,キャリアのことだけに限らず,仕事の内容など,幅広いテーマで少しずつお話しいただいたが,気付いたところを順不同にまとめておくと・・(あくまで全体を通しての印象),
- ワークライフバランスは,事務所の勤務弁護士よりも,インハウスローヤーの方がよい。土日をよく休んでいるし,深夜残業も少ない。
- 弁護士でなくとも法務部員は,自己が担当する業務に関連する法律には詳しい。よってちょっと調べればわかるような内容,ガイドラインに書いてあるような内容の回答しか寄越さない弁護士は当然ながら淘汰される。
- 公共政策担当業務は,事務所内弁護士ではあまり経験できない業務(大手が官庁に出向するケースはあるが,自己の利益をルールに反映させていくということはない)
- 弁護士だからと特別待遇されているケースは少ないが,同学年,同一年次の一般従業員と比べると待遇は良い。
- そこそこの規模のIT企業であれば,グローバル展開との関係で英語は必須になる(今ならギリギリ中途半端でも許されるかもしれないが)。
- インハウスが増えても,付き合いのある事務所が減るということはないかもしれないが,よりピンポイント,より高難易度のものに限定されるため,仕事の総量は減る。
特に最後の点は重要かなと思う。パネリストたちに,「自分たちがインハウスで入ったことにより,外に頼む仕事はその分,減りましたか?」という意地悪な質問に対し,みなさん素直に「Yes」とは答えなかったものの,「人手が足りないという理由で,よく調べもせずに外部に依頼していた事案は減った」「契約書のチェックは原則,社内でやっている」という話を聞くと,やはり,インハウスが増えれば,事務所の弁護士の仕事は(一定程度は)減るという関係は否定しがたい。
任期付公務員とかインハウスって増員分を吸収するための対症療法に過ぎず、じわじわと麻薬みたいに外部弁護士の仕事を侵食していくんじゃないかな。気付いた時にはパイが小さくなっているだけみたいな。それに日弁連が積極的に加担してるのには違和感がある。彼らは登録しないケースだって多いのにね。
(上記のdepon先生の意見には私も全面的に同意。それにしてもはてなでツイートを引用する場合のダサさは何とかならんかな。)
インハウスが1人増えれば,事務所の弁護士の仕事が1人分減るとまでは言えないまでも,今後もインハウスが増えていくという傾向は変わらないだろうから,事務所の競争がますます激しくなるのは間違いない。
自分が担当している仕事をふと思い返してみると,次の3種類に分けられる。
- 一定の専門知識,経験を有している弁護士だからこそできる仕事
- 弁護士であればだいたい誰でもできる仕事
- 弁護士でなくてもできる程度の簡単な仕事
常に最先端,高難度の仕事ばかりしているわけではなく,2点目,3点目に分類される仕事も少なくない。これは,特にベンチャークライアントの場合に多いが,社内のリソース,スキルによっては法務をアウトソースすることが合理的だからだ。ここは,価格競争にさらされやすいところではあるが,クライアントの業務,組織をよく理解し,素早く,適切に高品質なサービスを提供することでリテインにつながると考えられる。
ただし,クライアントが成長して法務体制が拡充し,法務部員やインハウスローヤーを採用するようになって法務体制が確立してくると自分が不要になるかもしれない。しかし,その時は企業規模が大きくなっていることが期待できるから,そのときまでに1点目の領域で存在意義が見出せるようにならなければならない。
とはいえ,「一定の専門知識,経験を有しているからこそできる仕事」というものも,言うほど簡単なことではないのだけれど・・