22日に,CRIC(著作権情報センター)主催の題記のセミナー(講師:福井健策先生)を聞いてきた。
このテーマは,コンピュータ創作物と著作権ということで,以前少し拙ブログでも紹介したことがある。
「コンピュータが自動生成した創作物」(2014年11月24日)
http://d.hatena.ne.jp/redips/20141124/1416825529
最近は,AI(人工知能)ブームが進んで,日々,新しい話題が出てくる。この問題は避けては通れない,ということで,いいテーマをいいタイミングで選択した福井先生,CRICはすごいなと思う。
プレゼンは,福井先生らしい見事な演出。
最初に2つの曲を聞かされる。いずれもピアノソロによるバロック調の静かな曲だ。聞き終えたところで,「1つはヨハン・セバスチャン・バッハによる作曲で,プロのピアニストの演奏にかかる曲です。もう1つは,バッハロボットによる自動作曲の曲を,自動演奏したものです。さて,どちらが本物のバッハ?」という問いかけがなされる。
見事に会場の反応は2つに分かれる。そんな様子で進行していく。
オルフェウスという自動作曲プログラムに,福井先生が書いた詞「CRIC★講演の歌」をインプットして作成された曲も聞いた*1。
コンピュータ創作物が,人間が創作した著作物と比べて,人に感動を与えるという面で見れば,大差ないところまで来ていることは否定できない。問題は,それを著作権制度にどうやって当てはめるのかというところ。卑近な課題として「創作的な表現といえるか」「著作者は誰か」「誰に著作権が帰属するか」といった法的問題がある。
福井先生は,こうした問題について,著作権法2条1項1号あたりの細かな解釈論を示したわけではない。もっと大所高所から,著作権2.0を考えてみよう,という問題提起がなされた。
コンピュータ創作物がマネタイズされ始めている。報酬を請求する根拠は,第一には著作権だということになると,この問題はそろそろ避けては通れなくなってきた。
ということを考えながら,これからスタジオへ向かって創作的とは言えないインプロビゼーションを垂れ流してくる*2。
*1:その詞を紹介したいけれど,詞自体は福井先生の著作物であることはほぼ間違いないので,控える。
*2:ジョン・コルトレーンのアドリブ演奏などはかなり研究されていて,「コルトレーン・チェンジ」なども古くから言われている。そのうち,コード進行を与えれば,コルトレーン風のアドリブ演奏が無限に吐き出されるようになるだろう。というか,もうあるのかもしれない。