Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

レビューされたら

当ブログ,1か月以上も間隔があいてしまった。過去最長かもしれない。
今回は,書面のレビューについて。


弁護士のアウトプットの多くは書面。難易度,重要度にもよるが,新人のうちは,先輩,ボスにレビューされて,真っ赤にされる。


レビューした後は,これもまたケースバイケースだが,理想的には,真っ赤にした書面を挟んで向き合い,なぜここはこうでなくてはいけないのか,こういう趣旨で直したから・・といったコメントを一つずつ口頭で伝えていく。とても時間がかかることだし,レビューワーからすると,最初から自分でやったほうが早いのだが,後輩を育成するという目的と,事務所としてより大きなケイパビリティを有するようになるために,投資としてレビューを行う。


常にこうしてフェイストゥーフェイスでレビューできるとは限らない。実際,多くの場合は,レビュー対象となるドキュメントをメール等で送ってもらって,レビューワーが手を加えたドキュメントを返送するということになる。


レビューする立場からすると,修正しつつ,その趣旨(なぜ原案ではダメで,こう直すべきなのか等)についてコメントで添えることが望ましいものの,逐一書いていられないので,つい,修正するだけになってしまうことが多い。


気になるのは,「レビューしといたよ」と返しておいて,「ありがとうございます」という返答が来るものの,その後の「フィードバックのフィードバック」がないケース。


準備書面等であれば,期限の関係から,修正履歴をほとんどそのまま反映して裁判所に提出されることも多い。それでも,「あそこは,なぜあのように修正したのでしょうか。」「私はむしろ,原案の表現の方が適切だと思いますが。」といったフィードバックのフィードバックは欲しい。


レビューワーは,その事案について,生の記録,情報に接する量で負けている。だから間違ったことを書いている可能性すらある。原案の方が優れている可能性だって当然ある。たくさん修正しながらも,ひとつもフィードバックが返ってこないと不安になる。


書面の品質という観点だけではない。レビュー目的である後輩の育成という観点でも,フィードバックがないというのは問題。


レビューされたものを見て,なぜそういう修正をされたのかを考え,逆に疑って読み返していくことによって力が付いていくはずのところ,「あ,なんか良くなった気がする。締切間近だし,ラッキー。」くらいの気持ちでは,次回以降に,そのレビュー結果が反映されることはない。


弁護士の場合,先輩,ボスが書面に手を入れてくれる時期は極めて短い。そういう貴重な機会を活かさない手はないなあ・・と思う。