Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

ぼくのかんがえたさいきょうのそしょうせいど

※完全にネタです。


訴訟をやっていて相手方が期限を守って書面を出してこない,その結果,期日が空転してしまい,結果的に訴訟が長期化するということはよくある。そういったときに,裁判所が特に咎めないで,「では,まあ次回までに」と流してしまうことも少なくない*1


遅れる理由にはいろいろあって,自分も間に合わなそうになって慌てることもあるので,期限に遅れた相手方を強く非難すると,ブーメランになりそうでもある。しかし,決められた期限を守らない,ペナルティもない*2,というのでは,司法に対する信頼が損なわれる。


そこで考えたのが,チェスクロック方式の導入。


チェスクロックは,チェス,囲碁将棋などのボードゲームにおいて互いの考慮時間を管理するための時計である。自分の手番のときには,自分の考慮時間が消費されていって,指すと今度は相手の時計が動き出す・・という仕組みになっている。そしてルールにもよるが,考慮時間を使い切ると即負けになるか(切れ負け方式),以後は1手30秒や60秒などの短い時間で指すことが求められる(秒読み方式)。これを訴訟に導入してみたらどうか。


訴状を提出すると,裁判長が,事件の規模,複雑さ等を考慮して,第1回の口頭弁論期日までに「本件における原告の持ち時間は180日,被告は200日とする」という命令を出す。その命令に対しては即時抗告をすることができる。そして,期日において裁判所は,準備に必要な期間を聞き,次回期日を決める(ここは通常の運用と同じ)。そこから時計がスタートし,書面を提出したところで時計が止まる。


さすがに切れ負け方式は,憲法上の問題が生じそうなので,持ち時間を使い切ると,1回あたり14日以内の秒読みに入ることにする。また,請求の変更や争点の追加・変更に応じて,裁判長は,前記の持ち時間を適宜変更することもできる。ボードゲームと異なり,手番が交互に来るわけではないので,同時に考慮時間が消費されるということもあり得る。


書記官に毎日のように電話をかけて「あと何日?あと何日?」と問い合わせる加藤一二三のような弁護士が出てくるかもしれない。


相手の考慮時間を効果的に利用して準備を進め,自分のターンが回ってきたらすぐに書面を提出するといった,時間攻めが得意な弁護士が出てくるかもしれない。

*1:少なくとも東京地裁知財部や知財高裁ではそういうことはない。

*2:民訴法157条「時機に遅れた攻撃防御方法の却下」はあるけれど・・