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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

奨励会試験(中)

前回のエントリは前置きだけで終わってしまった。ここからようやく今年の試験の話に入る。


奨励会試験は,毎年8月後半に3日間かけて行われる。今年は19日から21日。


前回のエントリで,辞めさせるとか,迷うとかという話を書いたもが,いったん受験すると決まれば,もちろん全力で応援する。「負けたほうがいい」と思うことはない。


1次試験が最初の2日間,2次試験が3日目。奨励会の弟分にあたる研修会でB1クラスにいたり,所定の大会(小学生名人戦等)で優勝したりすると1次試験が免除される。長男はB2クラスだったので,1次試験免除にはあと一歩足りなかった。


試験は東京,大阪の2か所で別々に行われる。1次免除者も含めて東京では32人が受験し,そのほとんどが6級を受験する。同門からはあともう一人,1学年上の6年生のY君が受験した。


1次試験は受験者同士が1日3局対局して,2日間合計6局までに4勝を上げれば通過できる。3敗すると失格する。なので,1日目に3連敗したらそれで終わりだ。ふだん大会や研修会,道場で顔見知り同士がつぶし合うという過酷な勝負。ちなみに,研修会B2クラス在籍者8名は全員受験している。


初日の集合時刻の8時半くらいに将棋連盟に着くと,多くの受験生がすでに受付を済ませて着席していた。半分以上は知った顔だ。中学生が多くて,小学生と高校生がチラホラという感じ。みんな少し緊張した表情で,それまで何年も真剣に頑張ってきた姿を知っているだけに,顔を見ただけで涙が出そうになる。


9時になって,受験者は対局場に移動する。引率の父兄は控室に残されるが,特にすることもなく,緊張感だけが残るので,私は30分ほどの距離にある事務所にいつもより少し遅れて出勤した。長男には,1日目終わったらとにかく結果を連絡しろとだけ伝えておいた。


父兄控室を用意してくれた配慮には感謝だが,上の階では受験者同士でつぶし合っているわけで,気軽に談笑する雰囲気でもない。


奨励会の通常の対局と同じなので,持ち時間は各自60分で,切れると1手60秒。普通に指せば1局2時間少々かかる計算。昼食休憩や対局の間の休憩時間も考えると,終わるのは5時くらいだろうと想像していた。


その日,15:30過ぎに電話がかかってきた。「1勝2敗だった。○●●だった。」「そうか。気を付けて帰れよ,先生にも連絡しろよ。」の20秒くらいの会話で電話は終わった。2日で4勝するためには,あと1つも負けられない状況に追い込まれた。正直,予想以上に悪い結果だった。


夜,帰宅してみると,予想どおり萎れていた。同門の受験生Y君は○○○の3連勝スタートで,明日1勝それば勝ち抜けできる好位置につけていたことも焦りの要因の一つだろう。


将棋の内容も悪かったらしい。相手はいずれも中学生で,負けた2局は,いずれも研修会同クラスB2が相手。厳しい手合いとはいえ2連敗してしまったのでは相当痛いことは間違いない。私はこの精神状態では明日はもう無理だろう,と半ばあきらめた。