Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

第18回彩の国小学生将棋名人戦

今年で4年連続の参加。小学生A級(三段以上)は,昨年に続いて3度目。


昨年は予想外に健闘して優勝するという結果が出た。小学校3年生での優勝は最年少だったとのこと。

http://d.hatena.ne.jp/redips/20111127/1322397591


今年の参加者の顔触れは,正直なところ,昨年よりもツブが少ない。強い子たちは奨励会に入ってしまったり,中学生になってしまったりしている。昨年は挑戦者であったが,今年は優勝候補として追われる立場になったといえるだろう。他の優勝候補となるのは同じ4年生の東京S君,神奈川K君あたりか。


大会はスイス式5回戦で,持ち時間15分,切れたら30秒。A級参加者は30人くらい。ただし,本当に三段以上の実力があるのはそれほど多くない(それでも過少申告が多い大人の大会と比べて,チャレンジ精神を称えたい)。


次男を連れてきていたので,大会の様子はほとんど見ていない。長男によると,内容が非常に悪くて,終始機嫌が悪そうな顔をしていた。とはいえ,途中で上記のS君,K君が敗れるという波乱もあり,両者と当たることなく○○○○○で昨年に続いて連覇という結果を残せた。


あとで長男に様子を聞いたところ,3局目が印象に残っていたようなので,詳しく話を聞いてみた。


3局目の相手は東京の3年生のK君。幼稚園児の頃から強くて有名だが,長男との1学年の差は大きく,1年ほど前までは対局することはあっても負けることはなかった。ところが,昨年夏に初めて年下に負けたのときの相手はK君だし,その後,名人戦東京都予選でも負けた。そのいずれも横歩取りの急戦で,知らない定跡形から一気にやられている。


今回も,戦型を聞いてみると,相横歩取りだったとのこと。「なんだ,相横歩取りならお父さんが得意だから,論評してやろう」と,エラそうに言ったところ*1,かなりムッとしていた。相横歩取りにされたということは,当然,戦型の選択権を有する後手がK君だと思ったところ,後手は長男だったらしい。


「じゃあ,自分から相横歩取りに持ち込んだの?」と聞くとそうでもない。そのカラクリは次のようなものだった。横歩取り模様で進んだ第1図。


通常ならば,先手が▲3四飛と横歩を取って,後手が△3三角あるいは△8八角成などの戦型を選択する権利を有することになる。プロでは今△3三角しかほとんど現れず,長男も△3三角以外を指すことはない。


ところが,先手は▲3四飛ではなく,▲2八飛と,飛車を引いて相掛かり調になった。そこで△2三歩としたところ,なんと▲2四歩と合わせてきた(第2図)。


これに△同歩,▲同飛となると,上記の第1図とまったく同じ局面になるが,先後が入れ替わる。なるほど,こうすることでたとえ先手を取ったとしても,手を渡して後手に成り替わることができる。なるほど完全に先手(先後を入れ替えて実質的には後手)からの急戦を狙った作戦だ。


ここで△7六飛と後手から横歩を取れば▲2二角成から激しい形に持ち込まれ,かつ,二度も負けていることは長男はわかっているので,一瞬,△8二飛と引いて,▲8七歩,△8六歩,▲同歩,△同飛,▲2八飛・・と,手の渡し合いによる千日手にすることも頭をよぎったようだが,相手の誘いに乗って△7六飛から▲2二角成の激しい順を選んだ。


結果,先手から相横歩取りへ誘導され,またしても知らない形からかなり危ないところに追い込まれたが,三度目は回避して勝ち切った。


今回も完璧な大会運営を取り仕切ってくれた小島先生ほかスタッフのみなさまに感謝しつつ,会場を後にした。

*1:この意味不明な自信は,は,わずか1週間前の社団戦の結果からきている → http://d.hatena.ne.jp/redips/20121030/1351528862