Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

ソーシャルゲームプラットフォーム連絡協議会の発表

昨日,グリー,ディーエヌエーら6社から構成されるソーシャルゲームプラットフォーム連絡協議会(連絡協議会)からプレスリリースが出された*1


ソーシャルゲームプラットフォーム連絡協議会が「ゲーム内表示等に関するガイドライン」等を策定し、 利用者がより安心・安全に楽しめる環境の向上を図るための自主的な取り組みを強化」
http://www.gree.co.jp/news/press/2012/0622_01.html
(上記は6社のうち,グリー社のもの)


自主的な取り組みとして,3つの情報が公開された。

ゲーム内表示に関するガイドライン

一つ目は,「ゲーム内表示に関するガイドライン
http://www.gree.co.jp/news/press/2012/0622_01/In-game_display_guidelines.pdf


業界の有力事業者による自主規制であり,これに従わなければ違法になるというわけでもなく,実際にゲームを開発して提供する事業者(SAP)に対して強制力を有するものでもない。とはいえ,これら6社がきちんとガイドラインに沿って運営することが期待されるので,今後,このガイドラインに沿わないゲームは減少していくだろう。


主にガチャで何がどれくらいの割合で出てくるのか(さらには,事業者が何か操作しているのではないか)というユーザの声に呼応して作られたもの。特に,ポイントとなるのは4条(表示すべき事項)。ただ「望ましい」と書かれているだけで,義務付けではない点に留意(これも実際には,それに沿うように運用されることが期待されるが)。特に,2項2号の,

特定の有料ガチャに含まれる有料ガチャアイテムのアイテム区分に応じて、その提供割合が分かるような表示をする方法(を有料ガチャにおいては表示することが望ましいとされる―引用者注)

は注目。実際に表示された提供割合(確率)とは異なる運営をしていた場合(結果的にその確率でアイテムが出るかどうかは別)には,優良誤認といった景品表示法の問題を超えて,悪質な場合には詐欺罪等の刑事法違反にもなり得るところだ。

リアルマネートレード対策ガイドライン

二つ目は,ずっと何年も前から問題視されてきたRMT問題の対策ガイドライン。特に最近ではソーシャルゲームのユーザが増えることにより,この分野でのRMTも問題になるようになった。

http://www.gree.co.jp/news/press/2012/0622_01/RMT_prevention_guidelines.pdf


まず,RMTを禁止する規定を盛り込むことを求めることに加え,6条の「推奨する手法」として,RMT制限の実効性を確保する手段についても言及している。


例えば,ゲーム内で「友人」などの関係を有する者としかトレードできないようにする(1号),匿名トレード方式(2号)などが推奨されている。匿名トレードとは,相対取引ではなく,市場での株の売買と同様に,譲渡と譲受のリクエストを互いに出し,それがマッチングした場合に取引が成立するようにする仕組み。これだと,確かにゲーム外で共謀して取引したとしても,実際にゲーム内で臨むような取引ができるとは限らない。

コンプリートガチャ等に関する事例集

三つ目は,先月出されたコンプガチャを禁止するガイドラインや,消費者庁の見解を補足する形で,コンプガチャにあたると考えられる事例(必ずしも典型的なコンプガチャとされるものでもない)が紹介されている。

http://www.gree.co.jp/news/press/2012/0622_01/Complete_gacha_case_studies.pdf


いわゆるカード合成や,カードが揃うとパラメータ値が上昇するといったケースもコンプガチャに含まれると考えますよ,とされている。


繰り返しになるが,これらガイドライン,事例集は拘束力があるものではない。また,このガイドラインに適合するものが適法であることが保証されるものでもないことに留意したい。


最後に補足。


これらガイドラインの概略と,グリー田中社長へのQA,ブリーフィングに書かれた記事

http://blogos.com/article/41754/

*1:同日に,もう一つ,ソーシャルゲーム利用環境整備協議会(仮称)設立に向けた準備委員会を発足させる旨のプレスリリースも出ているが,ここでは割愛。http://www.gree.co.jp/news/press/2012/0622_02.html