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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

大訴訟時代の到来か

日経コンピュータ誌2008.3.15号20頁は,「大訴訟時代の到来か」というタイトルのもと,3月6日にスルガ銀行日本IBMに対して約111億円の損害賠償を求める訴えを提起したことを伝えている。


http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20080306/295561/


に,その記事の一部が掲載されている。


この種のトラブル(システム開発をめぐるユーザ企業とベンダー間のトラブル)は,まさに自分自身が経験してきたことでもあるし,法曹になった後にも取り組んでいきたい分野である。


請負契約をめぐるトラブルとして典型的なのは,民法の教科書などでもよく取り上げられる建築請負に関する紛争である。しかし,システム開発に関わる紛争も多い(判例タイムズNo.1258,20頁でもこの点について触れられている*1)。もっとも,システム開発に関わる契約としては,請負契約に限らず,準委任契約もあるし,そもそもどちらの契約形態なのか,当事者間で共通認識がないケースもある。


この種の紛争の特徴,問題点などを挙げればキリがないところではあるが,ひとつ言われているのは,紛争が多いと言われる割には判例が少なく,解決の指針となるべき先例の蓄積がなかなか増えていかないことである。上記日経コンピュータの記事の中でも「提訴した例」として表が掲載されているが,「判決」がなされた例は1件もない。判例が少ない理由としては,(1)そもそも訴訟の提起に至らない段階で解決される,(2)判決に至らない段階で和解がなされる,(3)判決となっても公刊物に載らず,周知されない,ということにあるだろう。


この分野については,これからも気づいたことを少しずつ書いていきたい。


それにしても,毎度キャッチーな見出しをつけたがる日経BPさんではあるが,「大訴訟時代の到来か」というタイトルって・・

*1:同記事中では,「システム開発」という用語ではなく,「コンピュータソフト関係」という言葉が使われている