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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

【書籍】複数契約の理論と実務

日経一面下の出版社の広告で見つけて購入した本の紹介。


複数契約の理論と実務―判例法理から契約条項作成まで

複数契約の理論と実務―判例法理から契約条項作成まで

民法を学習したことがある方であれば,このタイトルをみれば「あの判例」と頭に浮かぶ事件があるはず。リゾートマンション売買契約とスポーツクラブ会員権契約という2つの契約について,事業者側の後者の契約の不履行により,前者の契約の解除も認めたという最判平8.11.12である。


まさしく,本書は,その判例を大々的にフィーチャーし,二者間契約,三者間契約に分け,さらにその中でも契約類型(主契約が売買契約である場合,賃貸借である場合・・)に応じて解説している。


システム開発に関する紛争を取り扱う私としては,このタイトルを見て,いわゆる多段階契約(フェーズごとに契約を細切れにする方式)がどのように取り上げられているのか気になる・・と思ってみてみたが,残念ながら,このような多段階型システム開発取引については言及されていない(通読していないので見落としているかもしれない。)。


確かに裁判例ベースで書いているので,今のところ多段階型のシステム開発紛争に関する裁判例スルガ銀行vsIBM事件しかないとすると,ネタにしにくいのかもしれない。


複数契約といっても,上述のとおり,二者間,三者間などバリエーションも多い。例えば請負,下請負における入金リンク条項の問題*1,融資契約と不動産売買契約の関係,リース契約と抗弁の接続の問題など,いくつか興味深い論点があるので,必要な時に深く読んでみようと思う。

*1:この点については,3年前に当ブログでも最高裁判例を紹介している。http://d.hatena.ne.jp/redips/20101019/1287498811