Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

論文力(3)

これから「やり方」について考えてみる。まず一つ目の要素である「知識量」について。


知識量を増やすには,いろいろな方法があると思う。これは各人に適した方法があるだろうから,あまりここでたいしたことは書けない。


脳内に情報を格納することは目に見えるものではないから,効果がわかりにくい。そこで私の場合,さしあたり外部ストレージとしてPCに記憶させることにした。よくPCをノートにして,情報をとにかく打ち込む人がいる。ただ,後でまったく見返さない,もしくは見返してもよくわからないのであれば,効果はほとんどない(打ち込むという指先運動を通じて脳に刺激を送って記憶させるという考え方があるかもしれないが)。どうせノートを作るのなら使えるノートを作らなくては。


PCに記憶させることは,基本的な条文の内容,解釈上問題になる箇所(論点)と,それに対する議論や判例などである。できるだけ後から取り出しやすいように整理することを心がけた。それでも8科目合計でA4,2500ページぐらいの大部ができあがってしまった。


私の経験上,ひととおり作ってみるだけでは,かなりイケてないノートにしかならない。まとめる過程で,条文を軸にまとめたほうがいいのか,○○先生の教科書の体系にあわせて作ったほうがいいのか,判例はやっぱり事案まできちんと書き残したほうがいいのか,など考えるべきことが山ほど出てきて,それまでに作った部分を見直したくなる。


体裁上の問題に限らず,理解が深まってくるにつれて,より気の利いた書き方ができるようになってくるので,何度も洗い換えするほうが,ノートも洗練されるし,もちろん記憶も定着する。


考えながらノート作りを何周もやるうちに,だいたいPCという外部ストレージではなく,メモリ上(頭の中)に記憶されるようになってくるものだが,大事なのは最後にメモリにロードする作業である。私の場合,3回見直すつもりで,試験から逆算して1.5ヶ月前にノートを出力して*1,ひたすら読み込むという作業に着手した(読み出すといろいろ考えて立ち止まったりするので,思ったより時間がかかり,結局2回しか見直せなかった)。


作ってみると,結局予備校が出している択一六法や,C-Book,シケタイのようなテキスト本に似てくるかもしれない。きとんとまとまったものが市中で手に入るのだから,なにもわざわざ時間を掛けて作る必要がないと考えるのも正解の一つだろう。ただ,作る過程で思考,記憶しているわけだし,自分の言葉で書こうとすることで,後述の「表現力」向上にもつながるので,悪くない方法だと思う。


この作業は短答対策にもなるので一石二鳥である。受験勉強にかけた時間のうちで最大の割合を占めていたのが,ノート作りだったかもしれない。

*1:逆に,1年半に渡って作ってきたノートを印刷したのは,このときが最初で最後だった