Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

得点分布

年末に受けた模試の個人成績や得点分布が公表された。


その中で,「今回の試験の特徴」という箇所に,

平均点の前後30点に受験者の61.0%が集中!

と,わざわざ「!」マーク付で書いてあった。新司法試験の短答式は350点満点だから,平均の前後30点に60%以上の受験生が集中していた,ということは,100点満点に換算すれば,平均点の前後約10点に6割の受験生が集中した,ということになる。


これを最初に見たとき,私は,問題の作り方が悪かったんじゃないのか?と思った。というのも,実質的に相対評価による試験の場合,受験生をうまく序列づけることが試験問題に要求されるにもかかわらず,みんなが同じような点数に集中してしまったとしたら,その機能を果たすことができなくなるからだ。要は,受験生の実力の分布をうまく予想し,その中でもできる人は高得点を稼ぎ,できない人はほとんど点がとれない試験,というのが良い試験なんだと思う。そうしないと,カンがさえたとか,運が良かったかによって順位が大きく左右されてしまって,適切な序列づけができないからである。まして,個々の受験生たちに客観的な位置づけを認識させるという模試の機能に照らせば,より一層,そういったことが求められる。


そう考えると,このような集中ぶりは感心できたものではない。


そこで,ふと平成18年の新司法試験の短答試験の分布はどうだったんだろう?と思って見直してみたら驚いた。今回の模試以上に,集中しているのである。つまり,平均点約232点の前後30点(202点から262点)の間には,1511人もいて,これは全受験者数2087人の72.4%にあたる。7割以上もの受験生が,平均点の前後30点に集中していたことになる。


もちろん,昨年新司法試験を受けた受験者層と,今回の模試を受けた受験者層は大きく異なるので,これをもって単純に比較することに意味はない。おそらく,昨年の本番試験を受けた受験者層のほうが粒揃いであったことは間違いないだろうから,上記のような結果もさほど不思議なことではないかもしれない。


昨年の結果と,今回の模試を見る限りは,今年の本番の短答試験もおそらく平均点の前後30点ぐらいに6割ぐらいの受験生が集中することになりそうだ。そう考えると,短答試験で差をつけるのは,その「ボリュームゾーン」から頭ひとつ抜け出すことが求められるから大変だ。そのために要する努力はかなりのものになるだろうから,果たしてコストパフォーマンスがよいかどうか疑問である。


一方,「ボリュームゾーン」の中のどこかに足切りラインが設けられることも間違いない。だから,「まあ,受験者の平均ぐらいの点数は取れるだろう」などと安心していると,当日たまたまいくつかカンがさえずに,10点ぐらい損をした場合には,「ボリュームゾーン」の下のほうへ追いやられて「足切り」という可能性も十分ある。そうすると,「受験者の平均ぐらいの実力があれば,足切りはない」などとは,とても言えないことになる。