試験終了から半年近く経過したが,この問題は簡単にカタがつくものではなさそうだ。
asahi.comの記事によると,
「出題、事前に知りメール 司法試験考査委員の元慶大教授」
http://www.asahi.com/national/update/1110/TKY200711100266.html
植村氏は4月11日のメールについて、「重要なので試験にかかわらず知っておいて欲しくて紹介したが、『(試験に)出るよ』とは書かなかった」と弁解した。
(中略)
8日開かれた参議院法務委員会では、鳩山法相が「出題された問題を見て(判例を)知っているか知らないかは重大な境目。とんでもないメールだ」と答弁し、再調査する意向を示した。同委員会では今後、植村氏の参考人招致を検討する。
とある。植村氏の弁解がとおるほど甘いものじゃないだろう。
話は変わって,法学セミナーの冒頭では,毎回,法科大学院探訪と称して,法科大学院の紹介を行っている。最新号(2007年12月号)の当該コーナーは慶応LSを訪問し,異例のインタビューを行っている。それによると,
編集部「『考査委員が受験指導してはいけない』という法務省の要請を 植村元教授は知っていたのでしょうか?」 回答者「植村氏は,『受験指導に関与するな』ということの意味を, 予備校や受験団体に関与するなという意味だと理解していて, 慶應大の自分の教え子に対して勉強会をするのはこれに含まれ ないと,当初は理解されていたようです。」 編集部「しかし,そんなことは旧試験以来法学部では学生も含めて常識 だったことでしょう。」 回答者「植村氏は初めて考査委員になられたのですが,どうしてそんな ご判断をされたのか,その辺はわかりません。あとでは大変軽 率で,申し訳ないと反省していましたが。」 編集部「答練は,大学施設を使って,学事課を通して教室を確保し,毎 回170人前後の参加者があったということですが,その規模で 行っていて,大学として知らなかったはずはないのではないで すか。」 回答者「それが事実,本当に知らなかったのです。 (中略) ネットなどで話題となって初めて私たちが知り,そんなことを していたのかと,びっくりしたのです。」 (法学セミナー636号2頁)
なかなか,法セミの編集者も突っ込んだ質問をしている。ここでも,植村氏・大学の弁明が苦しいものであることが窺える。内部統制が機能していない。
ちなみに,短答で疑惑となった判例は,租税法律主義(憲法84条)に関わる超有名な判例である。だから,事前に「重要判例解説(重判)に載っているから見ておくように」と試験委員から指示されなかったから知りませんでした,という言い訳は通用しない。そもそも,新しい判例が短答に出題されることは,昨年の問題からも明らかだし,平成18年に出された大法廷判決なんて,ほとんど他にないから,受験生から見ても,「これは出そうだな」ぐらいの感覚はわかる。
というわけで,私も事前にこの判例は知っていたし,重判にも目を通していたが,本番では間違えた。実際に受験した人ならわかってもらえると思うが,ちょっとやそっと読んだことがある,というレベルでは,この問題に関する限り,絶対的優位を保てない。なので,上記記事中のように,
この問題の正答率は、慶応の受験生が26.57%だったのに対し、慶応以外は4.52ポイント下回る22.05%。
と,思ったより差がつかなかった(そもそも,こんな大学別の正答率はどうやって調べたんだろう?法務省の調査結果にあったのかな?)。だからといって,「まぁ,いいじゃないか」で済む問題ではないが。