Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

教授のスキル

法科大学院1年次の課程も,来週の進級試験を除いては全て終了した。
最近の日経新聞では大学院の崩壊が特集として組まれているが,それと関連して約10年ぶりに大学に戻って最も違和感があることを書いてみようと思う。


大学の先生は,研究者であるとともに教育者でもある。教え方の巧拙は個人差があるのは仕方ないとしても(高い授業料を払っている側からすると「仕方ない」の一言ではすませられないのだが),最も大きな問題は,研究成果は公表され,評価されるにも関わらず,教育者としての成果なりプロセスは全く監視・コントロールされていない点にある。


これは,およそ給与所得者としてはあり得ないことだと思う。給与を支給される者としては,必ず仕事の結果だけでなくプロセスを上司,同僚,後輩など,内部の者から監視され,それが直接・間接的に個人の評価に繋がる。しかし,大学の教授は,講義室で何をしているのか,というのは顧客である学生を除いては全く非公開である。


このことを,教授の自律,独立の名において正当化するのは間違っていて,こうした現状からは,サービスの向上,不適切な箇所の是正はおよそ期待できず,受益者である学生のことを無視し続けていることになる。


学会のシンポジウムなどで「ソクラテスメソッドの実践」などと題して,授業風景をビデオ上映することによって監視になるわけではない。簡単なこととしては,他の先生の講義を一通り聴講してもらうだけでよい。そうすれば,まずい授業を行っている先生は,よい授業を行っている先生の講義を聴講すれば,何がしかのヒントを得られるだろうし,自分の講義に参加されれば,人の目を意識してさすがに多少は工夫するのではないだろうか。


・・ということを,進級試験が終わったら当法科大学院の院長に伝えようと思う。