先日,某法律系出版社の賀詞交歓会に参加したとき,ある先輩弁護士が私のことを別の弁護士に「テック・ローヤー」だと紹介してくれた。
大変光栄なことだと思いつつも,自分としては技術に精通した弁護士であるという自信はない。最近,法律分野でも議論が盛んになっている話題,ディープラーニング,アドテク,ブロックチェーン,ブロッキングなどは技術と不可分であるが,果たして自分がどこまでわかっているかというと・・
つい先日も,NBLで,「データ法務を扱うには技術の知識が不可欠だ」と偉そうなコラムを書いたのだけれど,
巻頭のコラムを書かせていただいております。 https://t.co/TjEJPnWCq2
— Masahiro Ito/伊藤雅浩🍀 (@redipsjp) 2019年12月17日
これは自分に対する戒めとして書いた。
その手始めとしてたまたま読んだ本がこちら。
解説されているアルゴリズムは,
- 検索エンジンとページランクの仕組み
- 公開鍵暗号法
- 誤り訂正符号
- パターン認識(ニューラルネットワーク)
- データ圧縮
- データベース(リレーショナルデータベース)
- デジタル署名
など,いずれも実用的なもので,情報系学科のアルゴリズムに関する講義で出てくるようなソーティングとか巡回ルート決定のような抽象的なものではない。
難しい数式などはほとんど出てこないし,非エンジニア向けに,わかりやすいたとえをふんだんに使っている。なので,あっさりと読み切ることができる(最後の章,背理法を用いた決定不能性の問題は難しいが,やや趣味の世界だろう。)。
自分の学部時代(90年代前半)にもすでにデータ圧縮,ニューラルネットワーク,誤り訂正(パリティ)や暗号のアルゴリズムやリレーショナルデータベースの仕組みは習っており(そのころはまだ検索エンジンは実用化されていなかった),当時の復習になった(学部時代,もっと勉強しておけばよかったと痛感するのはオジサンの習性である)。
今のコンピュータによるトランザクション処理,通信,検索処理が円滑で,かつ当たり前のように実現されているのも,その基本的なアルゴリズムはかなり古くから存在していたものであることに気づかされる。
今年は,本業の勉強も重要だけれど,できるだけこうした技術知識やビジネス知識のアップデートに注力していこうという決意をさせられた一冊である。