Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

母校での講演2016

昨年に引き続いて,今年も母校で講演させていただいた*1


まだ入学式を済ませたばかりのロースクール生のうち50-60人くらいが来ていただろうか。


内容は昨年とほぼ同様ながら,昨年は「しっかり勉強してください。そうしないと合格できません。」というはっぱをかけることが中心だったけれど,今年は「この逆境の中でよく志願してくれた。歓迎します。」というポジティブなトーンを強くして80分ほど話した。


先日の臨時総会の話もした。みんなが目指そうとする法曹界は,新規参入者の数を絞ろうとしている世界でもあるよ,というネガティブな面も伝えた。一方で,60期代以降のロースクール世代の活躍により明るい話題もたくさんあることも。


昨年は,会場での質問があまり出なかったと書いていたけれど,今年は「せっかくなので,みんな同じことが聞きたいだろうから,できるだけ会場で質問してください」とお願いしたところ,みな次々と手を挙げてくれてた。


挙げられた質問で思い出せるものとしては,


Q 学部時代から個人情報,プライバシーに興味がある。弁護士として関わる仕事があるか。公務員あるいは会社の中から関わったほうがよいか。
A 特にグローバルな視点で,この分野について知見を持っている弁護士は少ない。法改正後は実務の混乱もあるだろうし,今後も注目の分野なので仕事はある。ただし,儲かるかというと疑問。政策形成のための活動もあり,公務員,企業からの関与も十分あり得る。ただし,その場合でも,法律を体系的に学び,それが一定の水準に達したことを示すために,弁護士資格を有していることは大変重要だと考える。


Q 知財の仕事がしたいが,理系出身者でなくても大丈夫か。
A 日本で知財弁護士と自称,他称する人は数千人単位でいるが,おそらく9割以上は文系出身。著作権,商標などのソフトIPはそもそも技術のバックグラウンドはあまり必要ない。私は理系出身だが,技術分野のほんの一部しかわからない。依頼者との関係において技術の経験,知識が役に立つ場面は多いが,より重要なのは知財法の見識と情熱。


Q 小さい子供の世話をしながら受験を乗り切ったそうだが,何か工夫をしていたか。
A 今思えば不思議なくらいストイックな生活をしていた。ロースクールには17:30までしかいられず,お迎え,食事,風呂,寝かしつけを済ませて22:00から翌1時か2時まで勉強した。夜寝てしまうときは朝4時に起きていた。それくらいのことをしないと無理だという不安感が常にあった。


Q 授業の予復習,司法試験の勉強以外にどんな勉強をしていたか。
A せっかく学生になったのだから,MBAの講義を聴講するなど,いろいろ挑戦したかった。しかし,司法試験と関係ないところまで手を広げることは時間が許さなかった。他方で,法律の勉強は思ったより性に合っていたので,それが苦にならなかった。勉強の幅を広げるのであれば,司法試験後5月から始めてもよいだろうし,それから先でもかなりのことはできる。


Q 8年間の社会人経験を捨ててまでロースクールを経て弁護士になろうとしたのはなぜか。
A 別にキャリアを捨てたわけじゃなく(笑),自分としては,前職や過去の経験の延長上にあると思っている。詳しくは http://d.hatena.ne.jp/redips/20131219/1387382042 など参照。



現在の法科大学院は,制度全体としてみれば,壊滅的状況にあるのかもしれないが,この日,お話を聞いてくれた方たちはとても前向きで,熱心に聞いてくれた。きっと良き仲間になってくれることを信じている。