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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

第1回契約書タイムバトル

本日(5月10日)は,「世界初」となるリアルタイム契約書バトルイベントにジャッジとして参加した。


https://www.cloudsign.jp/media/20180410-keiyakusyotimebattle1st/


クラウドサインの橘さん・橋詰さんから,このイベントをやるからジャッジやりませんか?というオファーをいただいたのだ。正直,そもそもよくわからないし,イベントとして成り立つのかどうかもわからなかったけれど,面白そう,ただそれだけで二つ返事でOKしたのが先月。40代以上の人にしかわからないかもしれないけれど「轟け一番」のように,本来,エンターテインメントにならないはずのものを無理やりエンタメ化しようとしている感があり。


ところが,チケットを売りだしたら一瞬で売り切れるなど,事前の盛り上がりがあっただけに,つまらないイベントになったらどうしようなどとイベントが始まるまで不安に思ったけれど,そこは主催者,企画者の力が抜群であった上に,4人の選手たちのテクニックとトークで盛り上がるイベントとなった。



一時は,#契約書タイムバトル がツイッターのトレンド入りしたほど。


各自持ち時間5分(決勝のみ7分)で,チェスクロック方式で,自分の編集タイムのときだけ自分の持ち時間が減っていく。相手の時間が切れたら,自分の残り時間を使って最後の仕上げをすることができるだけに,時間攻め,手渡し,など,将棋で使われるテクニックと同等の技も登場した。


短い時間だったものの,契約書における「有利」とはどういうことをいうのか,NDAや業務委託契約書における基本的なポイントはどこか,など,多くの見どころを提供するイベントだった。また,ワード編集履歴付き+メール添付の往復というかったるいやり取りを,Google Docs上でリアルタイムに見せるというだけでも新鮮だった。そして何より,地味で,かつ何をやっているのかわからない契約書チェック・交渉を(現実とそれほど乖離させないで)面白く見せられたというのは素晴らしい成果だったように思う。


今回の発案者,企画者であるクラウドサインの橘さんは,最後のコメントで「今回は人間界の最強決定戦だった。次回は,契約書AIと人間の対戦をする。」と宣言していた。これ,どこかで見たことある流れだよな,と思ったけど,まさに将棋電王戦,叡王戦。人間界最強を決める叡王戦の優勝者がAIと対局するというシステムの契約書バトル版。もちろん,今は,「人間がやったほうが優れてるに決まってるじゃないか」と思うだろうけれど,将棋や囲碁のように,あっという間に追いつき,追い越すときが来るだろうなと思う。じゃあ,そのとき,契約書作成・レビュー業務に人間は不要になるのかというとそうではない。契約書という閉じたドキュメントの世界だけではない,ビジネスや相手方,あるいは社内の事情を適切に把握して指示を与えて結果を検証するところは,当面人間にしかできない。


まだ競技としては洗練させる余地もあったので,ルールをブラッシュアップさせつつ,AIとの対戦というよりは,人間同士の闘いをまだまだ楽しんでみたい気もする。


最後に,クラウドサインの橘さん,橋詰さんにはあらためてお礼を申し上げたい。よくわからないイベントでも乗ってくれそうだと思って声をかけてくれたことがうれしい。また,勇気をもって出場してくれた選手の方々も素晴らしいと思う。