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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

第四次産業革命に向けた横断的制度研究会報告書の公表

昨日のライトニングトークを受けて,「もっとブログを更新しなくては」と思い直し,題記の報告書の紹介。


本日,経産省から第四次産業革命に向けた横断的制度研究会報告書が公表された。
http://www.meti.go.jp/press/2016/09/20160915001/20160915001.html

(報告書本編 http://www.meti.go.jp/press/2016/09/20160915001/20160915001-3.pdf


以前,経産省公取委と共同で「オンライン関連事業に関する共同ヒアリング調査」を実施していたが,その結果も報告書で触れられている。


ヒアリングの過程では,プラットフォーム事業者(某Apとか某Gとか某Amとか)に対する事業者の不満が多かったようである。決済手段が出店事業者に不利なものしか利用できないとか,自分の商品・サービスの価格を決められないとか,アプリ間の共通の仮想通貨が禁止されているとか,プラットフォーム事業者自らが提供するアプリと競合するアプリには審査が厳しいとか,勝手に返金されているとか・・・多くの怨嗟の声が紹介されている。


これらの声を踏まえつつも,報告書では,

これらの取引実態が独占禁止法等の法令違反に当たるかは、詳細かつ精緻な検討が必要であり、一概に結論付けることはできない。例えば、アプリストア事業者が設けている審査基準について、露骨な性的表現のあるコンテンツや、賭博等の法令に違反するコンテンツを禁止すること自体は、アプリストア事業者として当然の配慮であるし、この規定を運用して個別の事案に対して適切に対処していくためには、ある程度抽象的な規定としておかざるを得ないとも考えられる。
他方、研究会での議論では、決済手段の拘束や、不透明な返金処理については、優越的な地位の濫用等にあたり得るという指摘があった。

と,マイルドなまとめ方だった(11-12頁)。


プラットフォーム事業者の問題のほか,データ利活用・保護についても取り上げている。「データが付加価値の源泉」であると位置づけ,第三者との共有,共同利用を促進するための取り組みとして,契約のひな型・ガイドラインを定めようということが挙げられている(18頁)。また,パーソナルデータについても,適正な本人同意取得のためのガイドラインを定めることが挙げられている(19頁)。


この分野は,経産省の取り組みは活発である。先月も匿名加工情報作成ガイドラインが定められたり*1,昨年も,データ取引に関するガイドラインが公表された*2。今後もどんどん情報がリリースされるだろうから追付くほうも大変。。