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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

個人情報・パーソナルデータに関すること(24)個人情報管理ハンドブック[第三版]

今回は,法令に関する話ではなく,本の紹介。


TMI法律事務所に所属する弁護士が束になって書いた「個人情報管理ハンドブック」が約8年ぶりに改訂された。

個人情報管理ハンドブック〔第3版〕

個人情報管理ハンドブック〔第3版〕


第2版は,私が弁護士になったばかりのころに購入した。当時は,いわゆる藤原ピンク本*1や,宇賀本*2で正攻法で勉強するのではなく,経産省ガイドラインと,この本を参照したものだった。


本書は,「個人情報管理」としつつも,個人情報保護法のみを対象とするのではなく,関連する法律(民法プロバイダ責任制限法不正競争防止法[営業秘密関連],マイナンバー法不正アクセス禁止法など)を「情報法」全体に広く薄く解説する体裁になっている。今回の改訂は,もちろん,平成27年改正法への対応を目的としたものであるが,民法との関連では忘れられる権利などの話があったり,営業秘密関連法が改正されたり,マイナンバー法が創設されたり,最近は,この分野の法改正が続いていることを思い知らされる。


また,主要目次が,

序 章 情報管理の新潮流
第1章 企業情報に関する法律の整理
第2章 情報取得時における問題点
第3章 情報管理時における問題点
第4章 情報の取扱体制の整備に関する評価基準
第5章 情報利用時における問題点
第6章 情報提供時における問題点
第7章 保有個人データに関する請求への対応
第8章 情報の漏えい時・紛争時における問題点
第9章 苦情処理および実効性の担保
第10章 海外の事例

こうなっているところからもわかるとおり,逐条解説の体裁ではなく,逆引き風になっている。この点は,第2版と変わりない。


しかし,第2版が472頁,4500円だったのに対し,第3版では大幅に増量して,605頁,6500円になった。その理由は,マイナンバー法などの新しい法律の追加もあるが,第2版になかった「第10章 海外の事例」が追加されたことが大きい。


越境データ移転はこの分野の重要テーマ。第10章では,欧州,アメリカはもちろんのこと,日本企業が問題となりやすい韓国,台湾,中国,シンガポール等のアジア諸国の精度について概説している。最終的な判断は,現地法の専門資格を有する弁護士らから情報収集することが必須だが,とっかかりとしては助かる。


これだけボリュームが増えたものの,ソフトカバーになった上に(第2版はハードカバーだった),紙が薄くなったためか,分厚さは第2版と同じ。デザインも一新されているので,一瞬,改訂版とは気が付かない。


本書は,かなり広い範囲をカバーしているため,個別の記載については他の専門書に後れを取る部分は否定できないが,まさにハンドブックとして手元に置いておくにはよいのではないか。