- 作者: 吉村昭
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/03/12
- メディア: 文庫
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これは,故・吉村昭が明治29年,昭和8年,昭和35年に三陸海岸を襲った大津波の様子を取材し,証言などに基づいて昭和40年代に書かれた作品である。
体験者の証言,特に,家族を失った子どもたちの作文などは,今回の災害にも通じるものがあり,言葉を失う。あまりにも今回の大地震と共通する部分があり,改めて何度も津波の被害を受けていたのかということを実感した。
最後に,三度の津波襲来に関して,死者数が約26000人→約3000人→約100人と激減したこと事実を挙げ,単純比較はできないものの,津波に対する認識が高まったことや,防潮堤が整備されてきたこと,避難訓練が行きとどいたことを指摘している。しかし,今回の津波では,過去の被害を上回った。それだけ,津波の威力がすさまじかったことが想像される。
吉村氏が,三陸地方で講演を行った際,地元の人でも,明治29年,昭和8年の津波の状況を知らない人が多くいたという。それだけ人の記憶は揮発しやすく,情報は承継されにくい。今回の震災のことは,ずっと承継されなければならない。