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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

三陸海岸大津波

話題の吉村昭三陸海岸津波」を読んだ。


三陸海岸大津波 (文春文庫)

三陸海岸大津波 (文春文庫)

これは,故・吉村昭明治29年昭和8年昭和35年三陸海岸を襲った大津波の様子を取材し,証言などに基づいて昭和40年代に書かれた作品である。


体験者の証言,特に,家族を失った子どもたちの作文などは,今回の災害にも通じるものがあり,言葉を失う。あまりにも今回の大地震と共通する部分があり,改めて何度も津波の被害を受けていたのかということを実感した。


最後に,三度の津波襲来に関して,死者数が約26000人→約3000人→約100人と激減したこと事実を挙げ,単純比較はできないものの,津波に対する認識が高まったことや,防潮堤が整備されてきたこと,避難訓練が行きとどいたことを指摘している。しかし,今回の津波では,過去の被害を上回った。それだけ,津波の威力がすさまじかったことが想像される。


吉村氏が,三陸地方で講演を行った際,地元の人でも,明治29年昭和8年津波の状況を知らない人が多くいたという。それだけ人の記憶は揮発しやすく,情報は承継されにくい。今回の震災のことは,ずっと承継されなければならない。