Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

ソクラテス・メソッド

前回触れた予習とも関わるが,今回はソクラテス・メソッド*1について考えてみた。


ソクラテス・メソッドは,ロースクールの授業の代名詞ともいえるものである。詳しい定義はわからないが,通常の大学の講義のように,講師が一方的にしゃべるのではなく,学生との対話形式によって進める方式をいう。


本学では,1年次の未修向け授業では一部の科目で行われていたに過ぎないが,2年次の演習科目の多くでは,ソクラテス・メソッドが導入されていた。一口にソクラテス・メソッドといっても,その進め方は多様で,あらかじめ指示された設問の回答を,座席順もしくは学籍番号順に指名して学生に答えさせるだけのもあれば,巧みに学生に質問を投げかけながら教員の用意したストーリーに導いていくというものもあった。


一般に,ロースクールにおけるソクラテス・メソッドの導入については,それほど好評ではないように思う。理由はさまざまあるが,考えられるものとして,

  1. 一クラスが30〜50人もいる状況では,対話が特定の学生と教員との間で行われるだけで,非効率
  2. 教員は,ソクラテス・メソッドを行うトレーニングを受けていないし,慣れていない
  3. シャイな日本の学生は,自発的に発言することも少ないし,不必要な緊張感を強いることになる


などがあろう。とはいえ,私は,いくつかのソクラテス・メソッドによる講義を振り返ってみれば,それなりに効果があったと感じている。


というのも,講義のみでは単調で頭に残りにくい話が,「あのときの○○さんの答えに対して,△△先生が,こう説明した」という学生と先生とのやり取りが行われることで,意外に1年後,2年後まで記憶に残る場合がある。そういう話に限って,重要な視点だったりするし,答案を書いている最中に,突然それを思い出して役に立ったこともある。


確かに,90分の授業で,記憶に残るやり取りは1回あるかないかだから,効率が悪いといえば悪い。しかし,基本的な事項の理解や定着は,自習によってなされるのが原則であるし,単調な講義を100回受けても,記憶に残らないことからすれば,90分の授業で1回でも記憶に残れば,もうけものだといえると思う。


このように,「記憶に残る」かどうかが,カギだと思うのだが,これを支援するツールとして,どのようにノートをとるかも重要になる。この点については,また別の機会に触れようと思う。

*1:ソクラティック・メソッドともいわれる