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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

裁判官の任命拒否

平成16年度の憲法の択一第3問で気になる問題がある。


問題の肢は,


「内閣は,最高裁判所の指名した者の中から下級裁判所の裁判官を任命しなければならないが,少なくとも指名が恣意的になされたと認める十分な理由がある場合には任命を拒否できる」


というものである。これは○か×か?


辰己の「肢別本平成17年度版」の831問(342頁)によると,○となっている。一方で,中大真法会の「平成16-18年度短答式問題と解説」の114頁によると,×となっている。どちらもそれなりの解説が付された上で,参考文献として有斐閣の「憲法II[第3版]」(野中ほか)の240頁を参照している。


そして,当該箇所を見てみると,

最高裁判所が・・実質的に指名したものについて,内閣は任命を拒否できるかという問題がある。憲法が全体として司法権の独立の強化を配慮していることと,裁判官の任命資格が法律でかなり厳格に制限されていることなどを勘案すると,明白な任命資格要件の欠如のような場合を除き,内閣は任命拒否を行なえないのが正当であろう。


としている。


「指名が恣意的になされた」ことが「明白な任命資格要件の欠如」といえれば,上記肢は○とすべきだが,そうではなさそうなので,×と考えるべきだろう。


ちなみに,仮にこの肢が○か×かはっきりしなくても,この第3問に関していえば,ほかの肢の正誤が明らかなので正解にたどり着くためには問題ない。