Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

提供価値のメニュー化・言語化

企業法務弁護士のサービス内容をどうやって(潜在)顧客に伝えるか。ふとしたことから気になったので、いくつかの事務所のウェブサイトを見てみた。

大手・老舗系

企業法務系の法律事務所のウェブサイトの構成はどこもだいたい似ている。提供サービス(業務内容/業務分野)についていえば、大手・老舗系だと、「労働」「倒産」「M&A」などの分類のほか、一部産業別に「ヘルスケア」などがあったり、事務所によっては地域別(東南アジア、中国など)のサービスが書かれていたりする*1

各メニューのコンテンツも充実しているところも多いが、弁護士に依頼しようとしているクライアントの立場に立って考えてみると、「何でもできそう」という安心感はあるが、自社が抱える問題に対してもっともうまく答えてくれる事務所はどこなのかを選ぶのは難しく思える。

ブティック系

ブティックになると、各事務所の個性があって特徴が見えてくる。例えば知財系ブティックの事務所のいくつかの事務所を見てみると、知財ど真ん中で、より細分化したサービスメニュー化しているところもあれば*2、「知財に一番力を入れているよ」ということで、知財をメニューのトップに据えつつも、「他の分野もできるよ」ということで、一般的な企業法務系のメニューも用意していたりするところもある*3

スタートアップ支援系になると、クライアント層をより強く意識して、インダストリ・マーケット別(例えば、Web3、AI・データなど)や、ステージ別(シード期、IPO前後など)などもある*4

これくらい詳細・具体的に情報提供していると、クライアントも選びやすそう。しかし、例えば、ブティックA事務所がP、Q、Rというサービスメニューを掲載していて、同じ分野のブティックB事務所がQ、R、Sを掲載していたとする。クライアントが「S」を求めてA事務所、B事務所を比較検討する場合、「S」がB事務所にしか掲載されていないからB事務所が選ばれる可能性が高いが、多くの場合、A事務所も「S」のケイパビリティがあったりする。そのうちに機会損失を恐れるA事務所、B事務所共にP、Q、R、Sを掲載するようになりがち。

あまり広く面で拾いに行くよりも、抽象化したサービス実例なども示しつつ、丁寧な説明をしているところは同業から見ても、お願いしたくなる*5

小規模事務所

所属弁護士人数10人前後くらいだと、そもそもウェブサイトのサービスメニューのメンテナンス工数を捻出することが難しい。そのため、所属弁護士の紹介の中で、practice areaを説明しているケースも多い。逆に、数名の事務所で、サービスメニューだけは大手と変わらないように広く書いているところは、「本当にできるのか?」という疑問が生じるので効果は微妙だ。

もっとも、そういう事務所は、ウェブサイトからの飛び込みを期待しているわけではないだろうから、あまりそこに労力を注ぐ必要はなさそうだ。しかし、クライアントからすると、担当者が経営層から「なぜ、(聞いたこともないような)この事務所を使っているのか」と聞かれた際、客観的情報としてウェブサイトのサービス内容が充実していると助かるのかもしれない。

そして、当事務所に至ってはサービス内容についてはコンテンツが何もない・・。これで現ウェブサイトのもとで5年間以上やってこれたのだから、まあいいかもしれない。

citylights.law

よりピンポイントに、具体的に

このエントリを書いたのは、自分自身の提供価値を何も具体化していないという現状がこれでいいのか・・という疑問が生じたからなのだから、「まあいいかも」で終わっては意味がない。そんな折、またまたツイッターで目にしたこの投稿。

こういう、具体的にどんなときに、何を、いくらでしてくれるサービスなのか、ということをメニュー化・言語化するということを当業界では怠ってきた。具体化されていたとしても、せいぜい、顧問契約の内容くらいだった。「法律事務は事案によって、クライアントの要望によって千差万別なんだから具体化・固定化することはできない」という説明で凌いできた。

しかし、ある程度パッケージ化できるサービスもあるはずで、それをやることはクライアントの不安にも応えることになるはず。そこから外れた事案ならば、サービス内容・金額を変更することはできるので、「一律30万円なんて無理無理」とはならない。

思えば自分も、初回の相談の段階、あるいはその前の連絡をもらった時点で、類型化されたものだと「●●と〇〇をやるところまでであれば、おおよそ▽~▽▽万円で、これに加えて、★★になると、プラスで▽▽▽万円くらいかかると思います。詳しくは別途見積を送ります。」などと答えることがあるのだけれど、きちんとメニュー化・言語化して公表することもできなくないはず。その過程で、自分たちに何ができるか、何ができないかを見つめることにもなる。

必ずしも、自分が提供できる全サービスをメニュー化する必要はなく、パッケージ化しやすいものだけを選んでメニュー化・言語化すればいいので、今までサボってきたけど、そこに手をつけたほうがいいのだろうなあと思った2023年正月だった。

※結果的に、LEACTさんの新サービスの宣伝みたいな投稿になってしまった。。

*1:一例として、西村あさひ森・濱田松本など

*2:一例として、中村合同内田・鮫島など

*3:一例として、ユアサハラ

*4:一例として、AZXGVAなど

*5:なお、これ以下は例を示しにくいので基本的に省略。