改正個人情報保護法の施行まであと2カ月とちょっとになった。最近,毎日,次から次へと新しい情報がリリースされる。なかなか追いつくのが大変。
各事業者としては,とりあえず,「最低限やっておかなければならないことへの対応」に追われていることだろう。具体的には,第三者提供の際の記録・確認義務をどうするか,外国にある第三者への提供に関することなどが考えられる。よって,「改正によって新たにできるようになった(とされる)ことの検討」は後回しになっているのではないか。後者の例は「匿名加工情報」である。
報道では,「改正法によりビッグデータが流通し,イノベーションが促進」というトーンで書かれることも少なくないので,匿名加工情報についての関心は相当程度あるとみられるが,個々の事業者単位でみると,「とりあえず今はその余裕はない」というところが多いのではないだろうか。
本エントリでは,とりあえず「匿名加工情報について検討せよ」と言われた担当者がとりあえず押さえておくべき情報を挙げるにとどめておく。
(経済産業省)匿名加工情報作成マニュアル 平成28年8月8日
http://www.meti.go.jp/press/2016/08/20160808002/20160808002-1.pdf
もっとも早くリリースされた資料。具体的なユースケースを挙げながら検討の順序や方法が示されているのでわかりやすい。当時としては信頼できるほぼ唯一の資料だったので,重宝されたが,現在は,個人情報保護委員会のガイドライン等も出てきたので,加工方法に関してはむしろ新しい資料を参考にしたほうが良いと思う。
(個人情報保護委員会)個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(匿名加工情報編)平成28年11月30日
http://www.ppc.go.jp/files/pdf/guidelines04.pdf
今後は,分野別ガイドラインや,認定個人情報保護団体が出す指針など,より詳細な基準が示されると思われるが,総本山のガイドラインとして押さえておきたい資料。
(個人情報保護委員会)「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン」及び「個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について」に関するQ&A 平成29年2月16日
http://www.ppc.go.jp/files/pdf/kojouhouQA.pdf
上述するガイドラインを補完する位置づけとしてのQ&A。匿名加工情報に関してもQ11-1からQ11-22まで,22個のQが用意されている。
(国立情報学研究所)匿名加工情報の適正な加工の方法に関する報告書 平成29年2月21日
http://www.nii.ac.jp/about/reports/pd/report-kihon-20170221.pdf
匿名加工情報に関して実務上もっとも悩ましいのは,どこまで加工すれば,法2条9項の要件を満たすのか,法36条1項に定める方法を満たすのかというところであろう。その点に関して,この分野の技術・法律面から一線級の専門家を集めて行った研究成果をまとめた報告書。明確に,個人情報保護委員会のガイドラインを補完する位置づけであることが明記されているため,信頼していい資料。
(個人情報保護委員会)匿名加工情報 「パーソナルデータの利活用促進と消費者の信頼性確保の両立に向けて」平成29年2月27日
http://www.ppc.go.jp/files/pdf/report_office.pdf
個人情報保護委員会が出したレポート。加工方法に関する詳細な記載があるが,上述の国立情報学研究所のレポートの流れを受けている。後半のユースケースごとに加工例が示してある点は参考になる。