Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

本当にあったミス(2)

昨日に引き続き,過去に起こったメールやPCの利用にまつわるトラブル事例の紹介。


メールにまつわるトラブルは前回2つほど紹介したが,次は,MS-Office製品関連を。なお,タイトルは「本当にあったミス」としているが,一部の事実をデフォルメもしくは抽象化している。

プロパティに注意


MS-Office製品(MS-Word, MS-Excel等)には,ファイルのプロパティとして,作成者,タイトル,キーワードなどを設定できるようになっている。Office2007より古いバージョンの場合,メニューの「ファイル→プロパティ」から設定できる。これをうまく使いこなすと,文書の検索などにも役に立ったりするのだが,ほとんどのユーザはこれを意識していない。


使わなくても困ることはないのだが,やっかいなことに,設定したつもりがなくとも,デフォルトで各種の情報が登録されるようになっている。たとえば,「作成者」フィールドには,使用しているPCに登録してあるユーザであったりするし,「タイトル」については,ワードの場合,先頭頁の先頭行に書いたものが埋め込まれたりする。


そして,このプロパティは,ファイルをコピーして,新たに別の文書を作成しても,放っておくと最初に作成したままの状態が維持される。


ビジネスで文書を作成する場合,「Book1.xls」とか,「文書1.doc」の状態,すなわち,まっさらな状態から作り始めるケースはむしろ少ない。複雑な文書であるほど,既存の似た文書を探し出して,それをコピーしてテンプレートにし,中身を修正するといった作業が行われる。しかし,その場合でも,上述のようにプロパティは,コピー元の状態が維持される。


タイトルに知られちゃまずいクライアント名,プロジェクト名が残っていたりするケースがある。そもそもコピー元が自分たちで作成したものではなく,どこかよそから流れてきた文書だったりすると,作成者も「○○株式会社 法務部」などと,まったく身に覚えのないものだったりすることもある。無関係の情報がプロパティに残っている文書を,社外に送ったりして,その中身を見た受領者が「何?これ?」といったケースも十分ありうる。


私がかつてA社(クライアント)のコンサルティングをしている際に,A社からB社に対して配布するための文書(約100頁)を作成した。その約2年後,B社の人から,「あのときの○○さん(私のこと)が作った文書とそっくりな文書をC社からも受け取りました」と言われて驚いたことがある。


B社の方のPC上で,そのファイルを見せてもらって,「ファイル→プロパティ」を見ると,なんと,作成者のところに私の名前があった。当然,私はC社に在籍したこともなければ,C社に対して文書を送付したこともない。C社には,当時私が在籍していた会社から転職した人物(A社のプロジェクトをいっしょにやっていた人物)がいた。


著作権法だとか,不正競争防止法の問題が生じるかどうかは別として,このプロパティを見る限り,「コピーしましたよ」と自白しているようなものである。