私の住んでいる地域では,中学三年生までの医療費の自己負担分が補助される(つまりタダ)。また,このことは私の地域に限らず,東京23区の多くが実施していると聞く。
このことは,とてもありがたいことだと思いつつ,「さすがにそこまで税金を投入する必要はないのではないか?」と不安にも感じていたところである。少子化対策の一環なんだろうが,「子どもが病気になってもタダだから,安心して産もう」と考える人はいなさそうだし。
そんな折,
- 作者: 吉本佳生
- 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
- 発売日: 2007/09/14
- メディア: 単行本
- 購入: 14人 クリック: 274回
- この商品を含むブログ (231件) を見る
を読んだところ,みごとにこの不安に関する記述があった。
これまで吉本氏の著作を3冊ほど読んだことがあるが,どれも基本的な知っておいて損はない知識,理論をわかりやすく説明してくれる。
さて,この本の8章のタイトルは,「子どもの医療費の無料化は,本当に子育て支援になるか?」である。
氏は,子どもの医療費無料化という政策は,ウケがよいため広がっているが,以下のような問題を指摘している。
- 無料であるがために,さほど必要でないのに病院に通う人が増える
- そのために,小児科が混雑し,待ち時間が長くなる
- 急いで処置すべき患者への対応が遅れる危険もある
- たいしたことない患者が増えることで,小児科の手間が増えるばかりで収入増にもつながらず,ますます小児科医が減る
- 忙しく働く母親は会社を休んだりすることによる時間コストが増える
- 自治体の財政を悪化させる
わが家でも「タダだから念のため医者に見せよう」と思ったことがないわけではない。一方で,小児科に電話予約を入れようとしたところ,受付開始(AM7時)から電話をかけ続けてもなかなかつながらず,やっとつながったと思ったら,「22番で承りました」などといわれて呆然としたこともある(これでは午前中がほぼ潰れる)。
氏の論理は,じゃっかん「風が吹けば桶屋が儲かる」的な飛躍も感じられるが,「医療費無料化」が手放しで喜べるものではないのも明らかである。