Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

配転

労働法の講義を受けていると,毎回,ブログのネタにしたくなるような話がいくつか転がっている。自分が,教科書や判例に現れる事例とはまったく異なる労働環境で過ごしてきたからかもしれない。


前回は「配転・出向」がテーマとなった。労働者の意に沿わない転勤や異動の命令に従えずに抵抗したら解雇された,というような事例で裁判で争われることがある。しかし,裁判所は比較的この手の問題について,労働者に厳しめの判断を下すことが多いといわれる。


例えば,共働きで小さな子がいたり,老親の面倒を見ている人の転勤命令なども「受忍すべき」として,使用者側を勝たせたケースがある。仕事していたときの目から見たとすると,確かに自分も結婚式の1ヶ月前から単身赴任をさせられたことなどもあるから,「そりゃあ,仕方ないでしょう」というふうに思っただろう。


しかし,現在,妻の収入をあてにしつつ,ロースクールに通いながら保育園にも通わせ,,という生活をしているときに,突如,妻に「大連にいきなさい」という辞令が出たとしたらどうか。ロースクールをやめてついていくこともできないし,子どもと二人で残されても困る。それを「受忍すべし」と言われると,ちょっと・・と思ってしまう。立場か変われば考え方も変わるものだ。


話は変わって,先生が「裁判所が配転について労働者側に厳しいのは,裁判官たちは2,3年ごとに全国を転々としているから転勤なんて当然でしょ,と受け止めてるからではないか,という話もあるんですよ」とおっしゃってた。


この話が比較的学生たちにウケたので,それに続いて「配転命令に不服がある人が,弁護士であるあなたのところに相談にきた場合,どういう形で争うか,という問題については,XXの方法と○○の方法がありますから,このあたりを押さえて書いてあるか,ということが試験でのハイテン基準になります」と言ったが,残念ながら前のほうの一部で小さな笑顔が生じたにとどまった。