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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

ファーストサーバ事故に関する調査報告書「比較的重度の過失」

7月31日付で,ファーストサーバ事故に関する第三者調査委員会の調査報告書(要約版)が公表されている。


http://support.fsv.jp/urgent/pdf/fs-report.pdf

この事故は2つの事故(データの消失と,復旧時の誤りによるデータ混入)から構成されているが,その過失の程度について,

第1事故に関する過失は,故意と同視できるほどの悪質な過失(重過失)には該当しない

不備のある更新プログラムによってデータを消失させたという積極的な過失であること,(中略)積極的に情報セキュリティの不備を生じさせていたこと,担当者Aが,本来冗長の許可が必要であることを認識しながら,無許可で本件メンテナンスを行ったことを考慮すれば,ファーストサーバの過失は,軽過失の枠内ではあるものの,比較的重度の過失であった

と,ギリギリ重過失ではない,という見解が示されている*1。私自身は事実認定の基礎となる情報を得ていないので,過失の程度については特にコメントできない。


すでにファーストサーバでは,7月中旬から賠償手続を進めており,既払いのサービス料の範囲内で支払も行われているようだ。


ちなみに,約款上は,重過失の場合には賠償責任が生ずるが,既払いのサービス料が上限となっている。ただし,これは契約者が消費者の場合,消費者契約法8条によって無効になるので,重過失の場合に免責・減責ができない。


なので,仮に消費者が相手となった場合,調査委員会が「重大な過失」と認めてしまうと,今進めている手続との齟齬が生じてしまう。消費者が相手であれば全額賠償(過失相殺はあるが)となるので,損害確定手続なども含めると大変なことになる。


そのあたりが「軽過失の枠内ではあるものの比較的重度の過失」などという表現にとどめた原因なのかもしれない。

*1:第2の事故についてもほぼ同様の記載