三茶道場の宮田先生は,ときどき門下生(子どもたち)に,「ちょっと○○買ってきて」とおつかいを頼む。
基本的におひとりで道場を切り盛りするので,なかなか食事をとるひまもない。私も,甘いモノ好きの先生が,おつかいを頼む姿を何回か目にしたことがある。
だいたい,おつかいを頼まれるのは,中学生か,小学校5,6年の子。さっと道場を出て駆け足で出かけていく姿や,袋を抱えて戻ってきておつりを渡す姿を見ていると,(勝手に)この子は先生からひとつ認められるようになったんだな,などと思ってしまう。
今日,長男を迎えに行くと,「先生におつかいを頼まれた」と胸を張って言う。そうかそうか,先生も長男のことを「おつかいができそうなヤツ」と認めてくださったのか(笑
で,頼まれたのは,山崎製パンの人気商品「ランチパック」だったとのこと。わざわざ,近所のスーパーのどの辺にあるか,まで教えてくれたらしい。
よく聞いてみると,今日がはじめてではなかったようで,これで,3,4回目とのこと。しかも,前は,「おなかすいたから,ざるそばでも食べたいな。買ってきて」と言われ,乾麺を買っていったら「○○(現奨励会員)も同じ間違いをした・・」と脱力されたらしい。
棋士を養成する世界では,昭和の終わりころまで,内弟子制度があり,多くの弟子たちは,小学生,中学生のころから,師匠の家に住み込んで修行をしていたらしい。宮田先生も,故高柳九段のもとで約5年間の内弟子生活をしていたようで,佐原・玉井共著『名人を育てた男』(株)エスティー・マネジメント1989年によれば,
内弟子時代の思い出といえば,高柳先生が二日酔いの時,奥さんにたのまれて近くの薬局に二日酔いの薬を買いに行ったことですね。
と述懐されている(205頁)。
三茶道場は,先生の家ではないが,なんとなくそこへ子どもたちが通いつめる姿を見ていると,平成の内弟子,という感じがする。