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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

3Dコンテンツへの変換は著作権侵害?

ITmedia小寺信良氏のコラムで,「2D-3D変換は改変にあたるか」というテーマで論じられている。


http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/1002/08/news018.html


東芝の米国向けテレビに搭載されるリアルタイムに2D映像を3D映像へ変換するという機能が,「著作権侵害」にあたるのではないか,という懸念である。


著作権法では,著作者人格権の一つとして,「同一性保持権」という権利を定めている(20条1項)。これは,著作者は,「その意に反してこれらの変更,切除その他の改変を受けないものとする」ということで,要するに,本人の承諾なくして著作物を修正したりしてはならない,というものだ。


ただ,この包括的例外規定として,同条2項4号の「著作物の性質並びにその利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変」については,前項(1項)が適用されないとしている。この同一性保持権の適用範囲については,種々の裁判例があるが,ネットの世界でも悩ましい問題は多い。


上記コラムの著者は,テレビ画面の隅に天気予報のようなネット上の情報であるウィジェットを掲載することも,同一性保持権の侵害になるのではないか,という懸念を示している。確かに,テレビ番組の著作者からすると,自己の著作物(番組)の一部にウィジェットが表示されることによって,「同一性保持権」が侵害されるという構成が考えられる。


これは一般常識に照らせば,違法だとは考えにくいところだが,これを適法だというためには,「意に反して」(1項)の点について,「黙示的に承諾がある」とか,このような部分的な変更が「やむを得ないと認められる改変」(2項4号)に該当する,などといった法的構成を考えねばならない。


この種の相談は,ときどきある。たとえば,第三者のウェブサイトの可読性を高めるために,自動的に「かなルビ」を振ってくれるサービスであったり,英語のページを機械翻訳して日本語英語を併記してくれるサービスなどがある。これも厳密にいえば,オリジナルコンテンツの著作者の同一性保持権侵害の問題が生じないわけではない。


ただ,このくらいのレベルで「違法の疑いがあるのでサービスはやめたほうがよい」などと言っていては,ベンチャーなど怖くて新しいサービスはできないし,使えない弁護士が増えるばかりである。