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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

個人情報・パーソナルデータに関すること(35)第4回情報法制シンポジウム1

新型コロナウィルスの影響で,情報法制研究所(JILIS)のシンポジウムがオンライン開催となったが,逆に5回に分けて開催されるというリッチな構成となっている。

www.jilis.org

 

本日は,その初回で,「個人情報保護法 改正の行方」というテーマで行われた。登壇者は,おなじみ。

報告1「2020年改正の概要と課題」 板倉 陽一郎(JILIS参与・弁護士・理化学研究所AIP)
報告2「個人情報保護法の構想」 鈴木 正朝(JILIS理事長・新潟大学教授・理化学研究所AIP)
報告3「個人情報保護法制 公民一元化の論点」 高木 浩光(JILIS理事・産業技術総合研究所主任研究員)
パネルディスカッション

司会の江口理事によれば,初回は800人もの申し込みがあったとのこと。オンラインだけに,企業に勤めている方も出席しやすいと思われる。

成立したばかりの2020年改正法の内容が注目されがちだが,板倉さんには40分という枠では圧倒的に不足で,仮名加工情報,個人関連情報に関する論点の頭出しにとどまった。

印象に残ったのは,鈴木先生が「大局的視点に欠ける」と喝破されていたこと。このことは,常におっしゃられていたことだけれども,どうしても我々を含む実務家,企業法務担当者は,法令の条文がどうだとか,ガイドライン,Q&Aの文字面を追いかけてしまいがちで,法目的やグローバルの動向から大局的な判断をすることができていない。そのため,新しいサービスが生まれにくい。

個別のトピック,論点は,追々取り上げてみたいが,一つだけ。

すでに話題になっていることだけれど,2020年改正法で新たに導入される「仮名加工情報」(改正法2条9項)。これはさらに「個人情報である仮名加工情報」と「個人情報でない仮名加工情報」に分類され,異なる規律がかかる(前者について,改正法35条の2第3項以下。後者について,改正法35条の3第1項から第3項)。

この違いはなんだ?ということになるが,定義中に,「他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報」とあるので(改正法2条9項),前者(個人情報∧仮名加工情報)は,他の情報と照合すれば,特定の個人を識別することができるものをいい,後者(¬個人情報∧仮名加工情報)は,他の情報と照合しても特定の個人を識別できなくなってしまったものをいうのだろうか。

こうしてどんどんまた大局的視点がないまま,あーでもない,こーでもない,と言うことになるのか・・