最近,裁判官に関する本を2冊読んだ。
1冊目は,
- 作者: 清永聡
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/08/01
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である。最近NHKでドラマ化されたらしい(私は見ていない)ので,まあまあ有名になったお話である。戦時中の翼賛選挙について,政府・軍の圧力にもかかわらず,選挙無効という「気骨の判決」を出した大審院判事(吉田久)のお話。
もう1冊は,
- 作者: 楠精一郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1997/04
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である。私は,大津事件*1で,政府の干渉をはねのけて,司法権の独立を護った(政治的配慮より,人権擁護・法解釈を優先させた)人物である程度の認識しかなかった。このような児島(当時の大審院院長)の毅然とした態度について,戦前には,「護法の神」という評価もあったらしい。著者は,そこについて資料を調査し,かなり説得的な論証を付した上で,疑問を付している。
似たような話として,戦前,「軍神」とあがめられていた乃木希典について,司馬遼太郎の小説(「坂の上の雲」,「殉死」)では,かなり消極的な評価がなされている。司馬や,楠の評価が正しいとは判断しきれないが,戦前の評価がやや行き過ぎたものであったことは間違いないと思う。
また,渡辺淳一の「遠き落日」を読んだときにも,似たような感想を抱いた。渡辺は,恋愛(エロ?)小説で有名だが,多くの伝記的作品があり(「遠き落日」―野口英世,「花埋み」―荻野吟子(日本最初の女医),「静寂の声」―乃木静子(乃木希典婦人)),そしていずれも面白い。「遠き落日」で描かれている野口英世は,浪費癖があり,極めて図々しい男であり,読んでいる途中に説教したくなるほどである。
話がまったくそれてしまったが,こういう本(上記の裁判官本2冊)を学部生のころぐらいに読んでいたら,裁判官を志望していたかもしれない。
*1:1891年,訪日したロシアの皇太子に対して,警護の巡査が切りつけて負傷させたという事件。