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弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

法科大学院における答案指導のあり方

ロースクール研究」No.9の特集は「総括 新司法試験 第1回・第2回から何が見えるか」である。


私は,その特集中の「法科大学院における答案指導のあり方」(25-31頁)の著者である先生に指導を受けていたが,あらためてその論考を読んでみて,なるほど,とうなづかされることが多い。


文部科学省が実施した答案練習会を実施しているか,という調査を各法科大学院に対して行ったところ,現場の教員に対して,「答案の書き方の指導をすることじたいが悪いのか」という不安を生じさせているようだ。


現に,母校でも具体的にそれらの調査に対して何か指摘があったのかどうかはわからないが,一部の科目の実施方法が変更されたと聞いている。私は,変更前の形式である科目を受講していたが,あれをなぜ変更しなければならなかったのか解せない。まさしく,法科大学院における基礎的な理論の勉強から,新司法試験を通じて,法適用,実践を学ぶ上での架け橋として重要な科目であったと考えているからだ。


法科大学院で「答案指導」などを控えている(と思われる)現状はまるで,個人情報保護法の施行前後とともに,名簿が作れない,病院で名前が呼べないなどの過剰反応が起きてしまったときと似ているように思える。


ただでさえ,前期修習がなくなり,「実務修習に入った修習生のクセに訴状も起案したことがない」と言われる我々であるが,法科大学院において自力で書面を書く機会すら奪われてしまったら,いったいどこで起案能力を身につければよいのか,ということになる。


なので,問題とされた指導(漏洩疑惑)のどこがいけなくて,逆にどういう指導をすべきなのかという境界をはっきりさせ,早急に適切な方向へ舵を切らないと,こうしている間にも法科大学院卒業生は送り出されるわけで,ますますこの制度のほころびが目立ってしまう。