Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

10を理解する

法学教室の「事例で学ぶ刑法」を読んでいるが,刑法以外にも,だいたい毎回,受験生向けの「ひとこと」が挿入されている。


少々長いが,2007年2月号(No.317)64頁(小林憲太郎)を引用する。

ただ10を理解したうえで8を書くのと,8を理解したうえで8を書くのとでは,まったく印象が異なる(むろんそれは点数に反映される)。信じられないかもしれないが,採点者はプロだからすぐに分かるのである。まだ経験の浅い私でさえ,採点していてすぐに分かるのだから,ずっとヴェテランの試験委員の先生方に至っては,もう朝飯前というところだろう。最初から自分のポテンシャルを封じて,「私は8までしか読まないぞ,理解しないぞ」と決め込むのは,したがって,試験対策的過ぎるからいけないのではなくて,そもそも試験対策的ですらないからいけないのである。


なんとか,答案を書くときには「底の浅さ」がバレないようにしたい,と思ってしまうところだ。しかし,この話によると,そういったまやかしはあまり効かないようだ。要は,正攻法がもっとも近道であり,真に理解している者が確実に合格に近づくということのようだ。


おそらく,上で指摘されている「8までしか理解しないぞ」という勉強法は,予備校の論証(のみ)を暗記しようとしたり,再現答案,参考答案から理解しようとする方法をいうのだと思う。この連載の別の回では,すぐれた学術論文なり,体系書を読みこなすべきだ,ということも書かれていた(具体的にどこで書いてあったのかは失念)。これは,8ではなく,10なり12を理解するための手段を意味するのだろう。