Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

東証システムダウンに思う

昨日の夕刊ではトップニュースだった東証のシステム障害だが,こういうニュースを見るたび,「日経コンピュータ日経BP社)」に好餌を与えてしまったな,と感じる(「失敗から学ぶ」みたいな緊急特集が組まれそう)。また,システム担当者たちの苦悩も目に浮かぶ。


自分が担当していたプロジェクトでは,さすがに東証のシステムよりはケタ違いに規模は小さいし,世間的なインパクトは少ないけれど,やはりシステム上で取り扱われるトランザクションの量は日に数万件,数十万件だったりするし,一日停止すれば,業務に現実に生ずる損害,企業の信用という面での損害は計算するのが恐ろしくなるようなシステムだった。


朝お客さんのところへ出勤して,システムが立ち上がっているか,毎朝ドキドキしながら確認していたこともあるし,トラブルが発生して,そこらじゅうへ謝りに走り回ったことも今となっては過去の話。


今回の東証のケースで,いったい誰が誰に対して金銭的責任(損害賠償)を請求し,現実にその支払義務が生じるのか,というのは具体的事情と,当事者の契約関係を見てみないとなんともいえない。しかし,私の少ない経験の範囲内で見る限り,現実にシステム保守・運用担当会社が損害賠償を現実に支払わされた,というケースはトラブルの数の割には滅多にない。


トラブルに限らず,プロジェクトが遅れたり(履行遅滞),仕様どおりにできてなかったり(瑕疵担保責任)の局面においても,実際に金銭支払いに及ぶケースは少ない。よく言えば,当事者の話し合いでうまく解決しているともいえるけれど,悪く言えばズブズブ(どっちもどっちよね,みたいな感覚があったりする)で,顧客企業(ユーザ)が泣いているケースも少なくない。


こういう問題が,今後,もっと深刻に争われるようになるだろうなあ,と感じていたことも,ロースクールに入る動機の一つだったことを思い出される。