Footprints

弁護士・伊藤雅浩による仕事・趣味・その他雑多なことを綴るブログ(2005年3月開設)

孟母三遷

3月,4月という季節に限らず,保育園はこどもの入れ替わりが比較的多い。もちろん,その理由は引越などによるものもあるが,意外に多いのは「もっといいところに空きが出たから」というものである。


「いいところ」という価値基準は人それぞれによって違うようだ。典型的なのは,

  • 経済的には公立にあずけた方が助かるから
  • 近所の保育園に空きが出たから

というものだ。これらに加えて,

  • 今の保育園はいろいろと不満があり,評判のよい保育園の順番待ちをしていたら,空きが出た

というのもある。多い人だと,2歳児でもすでに「3つ目」という人がいる。こうした人がいるため,人の入れ替わり,流動化はますます激しくなる。


うちがあずけている保育園は,雑誌AERAや,ニュース番組で紹介されたこともあって,わりと人気らしい。今あずけていられるのは,当時はまだ新しくて有名でもなく,ゼロ歳児に定員が余裕があったからであって,聞くところによると今では50人ぐらい待っている人がいるという。


しかし,そんな人気の保育園にも,不満があって新しいところを探している人がいて,あちこちの保育園に順番待ちをしている(しかも複数箇所に)。そうすると,多くの保育園で「うちは順番待ちが多い」という事態が生じていると思われる。これは,需給バランスからみると危険ではないかと思う。


というのも,通常の製造・流通の世界では,ある原料なり部品がショートすると,多くの買い手が複数の売り手に多めに発注してしまうから,結果的に実需をはるかに超えたオーダーが入り,しばらく経つと在庫の山を築く。


まあ,さすがに保育園の場合,こどもの総数は把握されているし,設立や定員拡大には行政の許認可・届出(正確な手続は不明)をしているから,上記のように,実需を見誤って保育園が濫立し,淘汰される,ということはないだろう。しかし,個別の保育園の経営者,管理者からすると,実体のない需要に惑わされて「うちは大人気だ」という慢心が生じ,サービスレベルが低下しないかどうかが不安である。


でも,なんかこの議論は,いちばんの当事者であるこどものことが置き去りにされている感じがする。