表題は,私の言葉ではなく,先日のセミナー*1でご一緒させていただいた大井哲也先生の言葉。
大井先生のスライドの最初にこの言葉が書いてあって,「なるほど!」と思ったので,今更ではあるけれど,ここで自分の解釈も交えて紹介してみようと思う。
システム開発紛争では,主に民法上のさまざまな論点が登場する。例えば,ぱっと思いつくだけでも,実体法との関係では,
- 契約の成否
- 債務の内容
- 解除の要件,成否(いいかえれば債務不履行)
- 損害,相当因果関係
- 責任限定条項の解釈
- 付随的義務(説明義務,プロジェクトマネジメント義務,協力義務等)
など。これらの論点がすべて,一つの事件で登場することも珍しくない。私の判例紹介ブログでは,システム開発紛争について,争点ごとのインデックスも作っているので参考まで。
さらには,訴訟手続でも,立証に関わるところでは,文書提出命令,当事者照会,検証等の民事訴訟法上のさまざまな手続が使われることが多いし,立証以外の諸手続でも,付調停,専門委員,閲覧等制限などのさまざまな道具を駆使することが求められる。
もっとも,ひとたび紛争さらには訴訟になれば,年単位での関わりが求められる上に,作業の負担は少なくない。ただ,それも,法務部門の「経験」という意味では大変貴重だといえる。
SaaSやAIの台頭があるとはいえ,まだまだしばらくは大きなシステムを開発する業務は続くし,開発方法論が進化してもトラブルはなくならない。なので,法務部門の方々はシステム開発紛争に直面したときは,自らの経験,知識を総動員して成長できるチャンスだと思って前向きに取り組んでいただければと思う。